親孝行の気持ちから「予算以上のホーム」を選んでしまった先の顛末
老人ホームには色々な種類がありますが、要支援・介護認定を受けていない女性の父親が入居可能なのは、「サービス付き高齢者向け住宅」「自立型ケアハウス」「自立型有料老人ホーム」の3つ。さらに「住宅型有料老人ホーム」も、施設によっては自立=要支援・介護認定を受けていない人が入れる場合も。どちらにせよ、興味のある施設があるなら、一度、問合せしてみるのが安心です。
女性の父が入居したのは、介護施設・医療施設が隣接し、なにかあったときも安心というホーム。ただネックだったというのが費用で、入居金一時金が1,000万円、月額費用が25万円。入居金は父親の貯蓄から捻出するとして、問題は月額費用。父親の年金は手取りで月15万円ほどで、残りを貯蓄で補うとすると、年間120万円ほどを取り崩すことになります。77歳の父親の貯蓄は5年ほどで底をつく計算だったとか。
ハッキリ言って予算オーバー。しかし、できれば環境が大きく変わるのは父への負担になるから、実家の近くという条件は譲れない。万全な、医療・介護体制、というのも、長い目で見れば大きな魅力……結局、毎月足がでる10万円のうち、半分は女性が肩代わりすることで費用問題は解決したといいます。
女性の後日談。
ホームに入居してから父親はすっかり元気を取り戻しているとか。何不自由なく、悠々自適に暮らす父に、女性も「無理してでも父をホームに入れて良かった」と胸をなでおろしていたといいます。しかし再び費用問題が勃発。この物価高を受けて、女性の父親が入居するホームでは、月額費用を5万円ほど値上げに。
株式会社TRデータテクノロジーが行った『老人ホーム業界の価格改定の現状調査』によると、月額費の値上げを行った法人は全体の26%。月額費用20万~30万円帯の施設では、管理費が27.0%増、食費が10.3%増でした。
値上げの分を父の貯蓄からの補填すれば、あっという間に貯蓄はなくなってしまう……できることは、女性の負担を増やすこと以外なく月10万円を肩代わりすることで決着。しかし女性自身、それほど余裕があるわけではなく、すぐに限界を感じたといいます。
――ごめんなさい、お父さん、もう限界!
笑顔で毎日過ごす父親に対して「老人ホームを退去して」と頭を下げる女性。思わず、声にならないほど泣いてしまったといいます。住み慣れた故郷を離れることは高齢の父にとって負担ではありますが、一旦、地方にある女性の自宅で同居を始めることにしたといいます。
昨今は、終の棲家としても人気が高まる老人ホーム。入居費用は入居者自身が払うのが多数派ですが、2割程度は入居者の子どもが払っています。子ども自身、経済的に十分な余裕があるなら問題はありませんが、自身の老後に向けた資産形成に影響を与えることもあるでしょう。老人ホームの平均入居期間は4~5年といわれているものの、10年以上になるケースも珍しくなく、誰が費用負担するにせよ、身の丈にあった施設を選ぶことが大切です。
[参考資料]
株式会社TRデータテクノロジー『有料老人ホーム等の月額管理費・食費改定の現状調査結果を公開 平均値上げ額は管理費7,570円・食費4,810円となり 2022年末調査と比べて、値上げ額が増加』