今外注している業務を取り込むことを考える
多くの日本企業で業務の外転化(企業内で行なっていた仕事を外注化すること)が進んでいます。今までは企業内で行なっていた給与計算などのオペレーション業務があっという間に中国の大連などに移管されるケースがその典型です。
こうした業務請負は「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」とも呼ばれますが、筆者もサラリーマン時代の最後は、こうしたBPOを担う外資系企業に勤務していたので、その拡大状況はよく理解しています。
オペレーション業務の外注化により、費用の低減と、工数を事業運営のコアとなる業務によりシフトさせることがBPO化の目的です。しかし、なかなか想定していた品質や原価低減効果が出ないケースも少なくありません。
海外などの移管先では、決められたマニュアルに従って業務を進めるので、非定常作業にはなかなか対応できません。また、委託先オペレーターの突然の退職などにより品質レベルが下がったりすることもあります。「自前でやればもっと融通が利くのに!」と皆さん心の中では思っていますが、オペレーションノウハウはすでに移管されており、また、委託元にはそれに対応する工数はもはやありません。
皆さんの職場でも同様な事態が起こってはいないでしょうか? 「高い委託料を払って業務委託しているが、提供されるサービスのレベルにはとても満足できない。実は契約を解除したいのだが、社内にそれを担える人材がいない」といったジレンマです。
「社内に担える人材がいない」と思いがちですが、実はいます。それはシニア社員です。シニア世代は、先輩からOJTで徹底的に一からこうしたオペレーション業務を叩き込まれている最後の世代です。残念ながら今の若手は自分の手で業務を完遂することはできません。やっていることは「ベンダー調整役」というケースも多くなっています。
筆者は人事畑ですが、若い頃は給与計算に間違いがあった場合には手計算で修正するのが当たり前でした。人事だけでなく営業でも総務でも多くのシニアの皆さんは同様な体験をされてきていると思います。
製造現場で問題を解決する際によく言われる三現主義(「現場で」「現物を(見て)」「現実的に」)に「原理」「原則」「原点」を加えた「ロクゲン主義」で仕事をしてきたのがわれわれシニア世代です。
「なぜこの処理を行なうのか?」「何を根拠にしてこの処理が工程に入っているのか?」「どの法律に基づいてこのような判断しているのか?」など、オペレーションの背後にある意味や目的を理解して仕事をしているシニア社員は会社にとっても実は貴重な存在なのです。
「今は外注化しているが、現状のサービス水準には満足していない。値段も高い」業務もシニア“半”個人事業主にとっての“ブルーオーシャン”です。今の職場のこうした不満も隠れた会社ニーズを探る視点になります。