将来的に独立を考えているサラリーマンが今のうちに行っておくべき「学びの場」があると、行政書士でリスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏はいいます。木村氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、“半”個人事業主化を成功させるために効果的な下準備の方法をみていきましょう。
50代から備えておきたい…「人生100年・現役80歳時代」を乗り切るための〈キャリア形成〉に欠かせない“最も大切なもの”とは【シニアキャリアコンサルタントが助言】  (※写真はイメージです/PIXTA)

“半”個人事業主化に向けて、土俵を整える

「バーチャル個人事業主」として今日から働く

「自分が提供する(仕事の)メニューを持っているか/いないか」が、サラリーマンと“半”個人事業主の決定的な差になります。

 

メニューができたら、それを提供できることを将来のクライアント候補に知ってもらう必要があります。自分の人柄・実力をよく知るファンを事前に作り、60歳以降の潜在クライアントを見つけておくイメージです。

 

“半”個人事業主では、まずは今の会社や関係の深い会社を将来の潜在クライアントとして想定しているので、今の日々の仕事ぶりがそのままPR活動になります。まずは半径5メートル以内の人たちから高い評価を得ることからスタートです。役職定年でモラルを下げ、「早く定時にならないかな」などと無為に時間をすごしている暇はありません。“半”個人事業主としての将来戦略を目指すことを決めたら周囲から「働かないおじさん」のレッテルを貼られることは致命的です。

 

ポイントは、今日今から気持ちの上では「すでに個人事業主として1年契約で今の会社と契約していると想定して仕事をする」ことです。来年の契約があるかどうかは、これからの働きぶりや成果で決まります。プロのスポーツ選手と同様、シーズン後に戦力外と見なされたら契約更新はありません。トライアウトに挑戦するかリーグを下げてでも違う球団を探す必要があります。

 

このバーチャル個人事業主として働く期間を持つことが“半”個人事業主、そしてそれ以降の個人事業主として働き続けるための重要な準備期間になります。

 

上司はもちろん、今まで部下だった職場のメンバーも将来のクライアントです。会社の看板をバックにお付き合いしているベンダーさんももちろん将来のクライアントです。誰1人ないがしろにはできません。

 

このバーチャル個人事業主の期間を働く際のポイントを挙げておきます。

 

・サポーターに徹して周囲の人の仕事をやりやすくすることが自分の役割と心がける

・依頼の期待値の150%のサービス提供を心がける

→依頼された納期の前での完成

・納品を心がける(スピード)

→要求事項に自分なりのプラスアルファの情報、成果を必ず加えることを心がける(付加価値)

・メール返信はクイックレスポンスで返す

・相手が嫌がる仕事を察してこちらから申し出て積極的に引き受ける

・経験・スキル・知識の周囲への提供を出し惜しまない

・業務遂行の際には、標準化を意識し徹底したマニュアル化を図る(教えるツールの商品化)

など

 

「自分は今日から個人事業主として1年契約を結んで働いているのだ」と仕事に対する基本スタンスを変えるだけで日々の行動が変わります。この意識を事前に持てるかどうかで“半”個人事業主としての成否は大きく変わってきます。

 

55歳からは社内人脈ではなく社外人脈

“半”個人事業主化の際には、当面の潜在クライアントである今の会社やお付き合いのある会社との関係が特に重要です。

 

しかしながら、“半”個人事業主戦略では、まず“半”個人事業主として独立を果たし、次のステップとしてはさらに今の会社や関係の深い会社以外のクライアントを広げていくことを想定しているので、サラリーマン時代から先を読んだ準備をしておく必要があります。それが社外人脈の構築です。

 

20代は学生時代の友人との交流もまだまだ活発ですが、それが30代後半をすぎると途端に自分の会社以外の人間との付き合いが減ります。この時期は、結婚する人も増えます。また、会社でもリーダーとして責任を持ちはじめる時期なので、体力的にも疲れ果てて、平日定時後や土日にわざわざ家を出る気がなくなります。

 

筆者の経験ですが、それが55歳をすぎると学校の同期会、会社の同期会などが再び増えます。30代から50代前半までは、出世や昇給のために馬車馬のように社内で成果をあげることに専念しますが、55歳をすぎると管理職は役職定年になり、60歳定年が間近に見えてきます。もはや社内飲み会や接待ゴルフなど社内営業に専念する意味も薄れてきます。

 

多くのサラリーマンは、社外人脈作りといってもこうした昔の旧交を温めるに留まるケースが多いのですが、55~60歳までの5年間はぜひさらに一歩踏み込んで新たな社外人脈の構築にチャレンジしていただきたいと思います。