心もとない年金、止まらない物価の上昇……。先行き不安な現状を前に、定年退職後の「身の振り方」について、思い悩む人も少なくありません。定年後の働き方として、行政書士でリスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏は、再雇用ではなく、勤務先との間で業務委託契約を結ぶ「“半”個人事業主」という働き方を推奨しています。木村氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、“半”個人事業主を始めるにあたって欠かせない「自己分析」のしかたについて、詳しくみていきましょう。
来たる〈人生100年・80歳現役〉時代…新しいキャリアに挑む中高年が知っておきたい、自分の「意外なセールスポイント」【シニアキャリアコンサルタントが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

自分の武器(商品)を磨き上げる

“半”個人事業主として活動するために必須な提供サービスの明確化

これから“半”個人事業主として踏み出していくためには、次の事項をはっきりさせておく必要があります。それは、“半”個人事業主として、「①誰の問題を解決するか?」「②どんな問題を解決するか?」「③どのように解決するか?」です。

 

この3つの問いに対して答えをはっきりさせることにより、「“半”個人事業主としてクライアント(会社)に対してどんなサービスを提供するのか」という自分の売りものが明確になります。

 

サラリーマン(雇用)の場合には、会社が社員に対して「この仕事をやってくれ」という上から下への業務命令に基づき仕事がアサインされ、管理職の指揮命令を受けながら業務を遂行します。サラリーマン側から自分は何ができるかを自ら「見える化」し積極的にPRする必要はありません。

 

これに対して、“半”個人事業主は会社と対応な関係で契約を結んで仕事を行なうので、個人事業主側から「私はこれができます」と商品・サービスを提案していく必要があります。会社と対等な立場で契約を結んで働く“半”個人事業主は、自分が提供できる商品を明確にしていく必要があるのです。会社が個人事業主からの提案を了承し、「それではあなたに仕事をお願いします」ということで契約を締結するイメージです([図表1])。

 

出典:『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より抜粋
[図表1]サラリーマンと個人事業主の違い 出典:『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より抜粋

 

出典:『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より抜粋
[図表2]人事インディペンデントコンストラクターとしてのサービス 「見える化」 出典:『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より抜粋

 

上の図([図表2])は、筆者が現在担っている個人事業主としての2つの役割を3つの問いに答える形で整理したものです。これが現在、筆者が個人事業主としてクライアントに提供しているサービスそのものであり、そこに冠された肩書は筆者のキャッチフレーズにもなっています。

 

“半”個人事業主としてその提供サービスを担える力があることの明確化

提供サービスを明確化する必要性を解説しましたが、そのサービスを担える力が自分にあることを会社に納得してもらう必要があります。今までと同じ会社で“半”個人事業主として働くケースでは、会社は自分の実力、経験を知っています。しかし、これから“半”個人事業主からステップを踏んで個人事業主として幅広く活躍していくためにも、きちんと自分のできること・得意とすることを「見える化」していくことが必要です。

 

その際にまず行なうべきことは徹底的な「キャリアの棚卸」です。キャリアの棚卸とは、「ある時点における自分に身についたスキル、知識、経験、資格、ノウハウ、マネジメント力など、保有する自己資産の種類・数・レベルを確認し、その価格を評価する」ことです([図表3])。

 

 

出典:『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より抜粋
[図表3]「キャリアの棚卸」とは? 出典:『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より抜粋

 

キャリアの棚卸のやり方は、2019年に出版した拙著『知らないと後悔する定年後の働き方』(フォレスト出版)で具体的に解説しています。ぜひご参照ください。ポイントは次の通りです。

 

①その時々の具体的なタスクと成果・業績を可能な限り数字で表現すること

②仕事だけに限らず、取得資格・表彰歴・社内外活動(サークル・趣味・自己啓発など)を含めて幅広く棚卸すること

③成功事例だけでなく、失敗事例も含めて棚卸すること(失敗事例にシニアだけが持つ強みが隠されています)