働きざかりを過ぎ、定年が見えてくるにあたって、今後の働き方について悩む人も少なくありません。今の時代、雇われて働く「雇用」だけでない働き方に追い風が吹いている、と行政書士であり、リスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏は言います。木村氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、詳しくみていきましょう。
「再雇用」を検討するシニア社員にとって、業務委託契約による〈個人事業主〉という働き方こそが有益といえる、これだけの理由【シニアキャリアコンサルティングが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「業務委託契約により個人事業主」という働き方が浸透しつつあるワケ

②65歳超の働き方として法律で想定されていること(改正高年齢者雇用安定法)

高年齢者雇用安定法という法律では65歳を超え70歳まで就労機会の提供を努力義務化しています。65歳までは「雇用が義務化」されていますが、65歳を超え70歳までの領域では、「雇用にこだわらず業務委託契約を締結する」ことも措置の1つとして認められています。

 

業務委託での就労機会提供について、国がお墨付きを与えているようなものなので、企業も今後65歳以降の就労機会提供に関しては、雇用だけでなく業務委託契約を締結することが増えてくることが予想されます。

 

③雇用での一律的継続就労に対する企業側の回避意識

これは、先ほどの②とは表裏の関係にある理由です。健康状況も働く意欲に関してもバラツキのある65歳を超えたシニア社員を全員継続して雇用し続けることに関しては、企業側もネガティブな意識を持っています。

 

これから定年を迎えるボリュームゾーンであるバブル入社世代や団塊ジュニア世代を全員70歳まで企業内に囲い続けることは現実的に不可能です。

 

④コロナ禍でのテレワーク経験

今回のコロナ禍は、多くのサラリーマンにとってこれからの自分自身の働き方をあらためて考える大きなきっかけになりました。

 

各種アンケート調査でも「コロナ禍を経験し、転職への関心が高まった」と答える割合が高まっています。テレワークの経験により、一日中フル稼働していたと思い込んでいた自分の仕事時間の中にかなりの隙間時間が存在することや朝夕の通勤時間の無意味さに気がつきました。

 

こうした気づきは働く側だけでなく企業側も同様です。社員として雇って会社に来て仕事をしてもらわないと回らないと思っていた業務がテレワークで完結できることに気づきました。今回のコロナ禍で経験したテレワークでの業務遂行は、実質的に業務委託で仕事をやってもらうのと何ら変わらないケースも多いです。

 

雇用でないと仕事が回らないと思っていた従来の常識が崩れつつあるのです。業務委託であれば、面倒な労務管理からも解放され、残業・休出、年休付与管理も必要ありません。

 

コロナに関連した出来事は、働き方に関する“パンドラの箱”を開けました。こうした経験は、雇用に限らず業務委託という仕事の提供方法があることを企業に知らしめ、業務委託で個人事業主と契約することへの抵抗感をさらに薄れさせています。

 

 

木村 勝

行政書士

リスタートサポート木村勝事務所 代表