今のシニア世代は、体力も気力も旺盛な人が少なくありませんが、定年退職後の再就職先を考える際には注意が必要です。「肉体を駆使するような仕事や精神的にストレスの大きい仕事は避けたほうが賢明」と、行政書士でリスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏は言います。今回は、木村氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、老後に最適な働き方について見ていきましょう。
〈マンション管理人〉でも〈起業〉でもない…定年後の「最強の働き方」とは【シニアキャリアコンサルティングが助言】  (※写真はイメージです/PIXTA)

シニアからの「独立」は、体力・メンタル面で無理をしない

シニア世代と呼ぶことが憚られるほど今の50代・60代は元気です。しかしながら、30代・40代と同じようにはいかず、明らかに身体面で衰えています。たとえ今のところ健康上に大きな問題がないとしても、肉体を駆使するような仕事や精神的にストレスの大きい仕事は避けたほうが賢明です

 

2022年8月発売の「週刊現代」で、「『ビンボー老後』を招く『65歳の壁』」という特集が組まれたことがあります。筆者もコメントを寄せているのですが、この特集記事では、「稼いでいるのに身体が壊れ、寿命が縮んでいく」悲惨な事例が紹介されています。

 

シニアからの職業としては、警備、マンション管理、清掃などが思いつきます。マンション管理の仕事の実態を記事からの引用で紹介します。

 

《朝6時半に出勤してゴミ置き場に溜まっている大量のゴミを仕分けて移動させる。それだけでヘトヘトなのに、終わったら共用部分を上から下まで掃き掃除。昼に一息つけるかと思うと、今度は住民に雑用を頼まれたり「掃除の仕方が甘い」と叱られたり。本社に「あの人はいるだけで何もしていない」とクレームを入れられたときは、さすがに気がめいりました》(週刊現代、2022年9月3日・10日号、P42)

 

「働くついでに体も鍛えよう」などと考えて、炎天下での交通誘導員など、安易に体力が必要な仕事に就くと、長続きしないばかりかケガや病気を招きかねません。

 

さまざまな仕事にチャレンジしてみるのはよいことですが、自分の体力や適性も踏まえたうえで慎重に踏み出すことも必要です。シニアになってから体調を崩すことは避けなければいけません。安易に健康のためという考え方は危険です。

多額の初期投資が必要な独立は避ける

退職金をすべてつぎ込むような多額の初期投資が必要な「独立」も避けたほうが賢明です。「起業」ではなく「独立」の場合、ほとんどのケースでオフィス新設の必要はありません。自宅で十分です。“独立したら(元の会社の同僚が来ても恥ずかしくない)駅前の一等地に立派な応接セットをそろえたオフィスをかまえたい”と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そこは見栄を張らずにガマンです。