サラリーマン業務の「個人事業主化」が進む理由
今までは雇われて指揮命令を受けて働く「雇用」以外は、例外的な働き方にとどまり、普通のシニアサラリーマンの選択肢として現実的ではありませんでした。しかし、今後は「業務委託契約により個人事業主」として働く働き方に追い風が吹いています。次にその理由を説明します。
①企業における兼業・副業の拡大→業務委託経験値の蓄積→抵抗感が薄れる
2021年10月に経団連が公表した「副業・兼業に関するアンケート調査」では、社外からの兼業・副業人材の受け入れを30.2%が「認めている」または「認める予定」という調査結果でした。
なお、兼業に関しては、ほとんどの企業は業務委託による兼業・副業受け入れを想定しています。下記、図表をご覧ください。企業は兼業・副業を認めるようになっていますが、認めている副業は、実は上の図の【雇用+雇用】パターンではなく、下の【雇用+業務委託】パターンです。【雇用+雇用】パターンは、労働時間を2社間で通算して残業分を算出する必要があるなど、労務管理が複雑になり、多くの企業で認めていません。
企業は、【雇用+業務委託】パターンで自社の社員に対して業務委託による兼業・副業を認めているので、逆の受け入れである「個人事業主に業務委託で仕事を依頼する」ことに対しても経験値を積んでいます。業務委託に違和感がなくなってきているのです。
筆者は、2014年に個人事業主として仕事を始めましたが、その当時は業務委託での業務遂行に関して企業側も経験値が少なく、「やったことがない」「雇用以外の働き方は想定していない」という企業が多かったのですが、最近では雇用ではなく逆に業務委託での契約締結を求める企業も増えてきています。
特にスポットで「必要な時期に」「必要なだけ」サポートが必要な場合には、雇用契約では柔軟な契約期間を締結するのが難しかったり、必要な時期が終了してもすぐには解約できなかったりするので、業務委託で仕事を依頼するほうがメリットは大きくなります。
また企業は、自社内で役職定年制や再雇用制などを運用し、長年貢献してきたシニア社員に対して“厳しい処遇”をしています。こうした状況のもとで、あえて外部からシニア社員を採用する理屈が社内的にも成り立たないというお家事情もあります。
長年会社に貢献してきたシニアの処遇を下げる一方で、同世代のシニア社員を外部から「雇用」で受け入れれば、自社のシニア社員から猛反発を食らうことは明らかです。シニア社員の転職が厳しい理由の1つにはこうした事情もあります。「あの人は違う」という扱いにするためには、「雇用」以外の契約(業務委託など)で受け入れるしか方法がないのです。