失われた30年に終止符…賃上げの動きは広がるか?
バブル経済崩壊後、日本経済は落ち込み、「失われた30年」と呼ばれる低迷期に陥りました。日本人の消費力が落ちるなか、価格改定の際に行われたのが「内容量を減らし価格は据え置き」といったものでした。しかし昨今の物価高では「これ以上内容量を減らすのは……」となり、価格を引き上げ。結果、冒頭のように「昔はもっと量が多くて安かったのに……」と違和感を覚えることに繋がったのでしょう。
またバブル崩壊以降、経済はデフレ状態に。特にハンバーガーや牛丼などの外食では、私たちも驚くような値下げ合戦が行われ、ワンコインランチは当たり前。通常700円以上のランチメニューが500円で食べられるお得なランチブックが話題になったのも、もはや遠い記憶です。
そんななか、私たちの給与の推移をみていくと、いまいちさえません。厚生労働省『賃金構造基本統計調査』によると、2023年の日本人の平均月収は31万8,300円。2013年29万5,700円、2003年30万2,100円、1993年28万1,100円と、多少の増減はあるものの「この30年ほぼ変わっていない」という状況。
そんななか、昨年内閣府が公表した『経済財政白書―動き始めた物価と賃金―』では、「我が国は依然としてデフレから脱却したとは言えない状況ですが、モノだけでなくサービスについても価格が改定される頻度が上昇しているなど、企業の価格設定行動に変化が見られ始めており、今の日本経済で注目するべき動きとなっています。」と述べているとおり、「物価上昇」、さらには「賃金上昇」の好循環となるのでは、と期待感が高まっています。
実際に今年の春闘では、物価上昇分を上回る回答が相次ぎ、期待通りの展開に。ただ懸念点をあげるとすれば、賃上げの動きはまだ限定的であるということでしょうか。
城南信用金庫と東京新聞が中小企業に対して行った賃上げに関するアンケート調査によると、2024年3月調査で「賃上げ予定あり」は36.0%で、前回1月調査よりも5ポイントほど改善。一方で「賃上げの予定なし」は30.9%と、以前として3割の中小企業は賃上げの余裕すらないという実態が浮き彫りになっています。
賃上げの動きをさらに大きく、強いものにできるのか……いまが正念場だといえそうです。
[参考資料]