アクティブに暮らしていた78歳Aさんを襲った突然の病魔
Aさん(78歳/男性)はとてもアクティブな方で、資格を活かして、勤めていた金融関係の職場から仕事を依頼され続け、年間250万円ほどの給与を受け取っていました。
ご自身の年金も年間150万円ほどあり、生活に困ることはなく、またAさんのおおらかな性格から、友人もたくさんいました。同世代の友人同士で、趣味の釣りやゴルフ、食事に加えて、数泊する国内旅行にも積極的に出かけていました。
奥様はすでに他界されていて、一人暮らしをしていましたが、元気な父の様子に、50代の2人の娘たち、BさんとCさんも安心して見守ることができていました。健康元気、病気知らずのAさんでしたが、病魔は突然襲いかかってきます。
Aさんが79歳になろうというとき、脳梗塞になってしまったのです。
重い後遺障害が残ってしまい…
幸い、近くに住んでいた長女Bさんに電話で助けを呼ぶことができ、救急搬送と手術のうえ一命を取り留めたのですが、重い後遺障害が残りました。一人で暮らすことができなくなってしまったAさんは、介護付き有料老人ホームへ入居することになります。
そこで、近くに住んでいた長女Bさんが急遽Aさんの財産管理を担当することに。働けなくなったAさんのお給料は止まったものの、Aさんが事前に銀行の代理人カードなどを作っていたこと、またAさんの給与口座には2,000万円程の資金があったことから、たちまちお金に苦労するということはありませんでした。
しかし、どうにも詳細がわからないお金の流れがあり、Bさんは首をかしげます。
謎のクレジットカード明細
アクティブなAさんはお友達と食事や旅行にでかけるときはクレジットカードを利用していました。高齢者向けの特典などを上手に活用できるお得なクレジットカードを何枚か愛用していたのです。
ここまではまったく問題ないのですが、Aさんが脳梗塞で倒れたあと、クレジットカードからの請求額は固定費を除けば変動する理由はないはずです。
ところが、銀行引き落としがかかるクレジットカードの請求額が月によって変動するのです。当然Bさんは「父は施設で暮らしているのに、どうしてクレジットカードの請求が変動するんだろう?」と疑問に思います。
請求の明細を調べようとしたのですが、すでにクレジットカ―ドの明細はペーパーレス化されており、ウェブページへのログイン情報もわかりません。Aさんが直接カード会社に連絡できるといいのですが、重い後遺症のため、そのような連絡もできません。
Bさんは気持ち悪い日々を過ごしながら試行錯誤の末、クレジットカードの明細書を手にすることができたのですが、そこに掲載されていた請求額の変動の理由にBさんは驚愕します。
ETCカードによる高速料金が変動していたのです。Aさんは入所中ですから当然、運転なんてできるわけがありません。
Bさんが知っているAさんの友人に確認したところ、友人も驚いて、言いました。
「Aさんと旅行するときは経済的に余裕のあるAさんが高速道路代を気前よく出してくれてたんです。そのETCカード、もしかしたら、まだ友人が持ったままかもしれません」
そんなことがあるのだろうかと、Bさんは思わず耳を疑いました。情報にはかなり曖昧さもあり、ETCカードの存在の確認はできず、ETCカード所持疑惑浮上した友人もすでに高齢者で、連絡を取ろうとしても話がかみ合いません。
最後まですべてがはっきりわかることはなく、釈然としない気持ちをBさんは抱くのですが、クレジットカード利用を停止させることでなんとか幕引きを図ったBさんでした。