働いている間は年金を受け取らず、受取額アップを狙う……そんな思いから「年金の繰下げ」を選択するケースも多いといいます。しかし年金の繰下げ中に亡くなると、遺族は思いもよらぬことに直面することも。みていきましょう。
夫婦で「月23万円」、5年待てば年金だけで暮らせるはずが…69歳夫の急逝に妻号泣、悲しみに追い打ちをかける「繰下げ受給」の勘違い

年金の繰下げ中に亡くなったら…「未支給年金」と「遺族年金」はどうなる?

――70歳まで働いて引退後に年金を受け取るようにすれば、年金だけで暮らせるようになるから

 

そんな事をいって、年金の繰下げを選択していた夫。妻は5年もすれば「年金だけで生きていける」という安心感が得られると考えるでしょう。しかし想定外のことが起きることもゼロではありません。70歳まであと1年というところで、夫に突然の不幸が襲い帰らぬ人に。「この先、どうやっていきていけばいいの?」と泣き崩れる妻。このとき年金事務所でしっかりと「未支給年金」の請求を行いたいもの。

 

これは年金給付の受給権者が死亡した場合、一定の範囲で遺族に支払われなかった年金が支払われるというもの。夫は69歳まで繰下げ受給をして、4年間、年金をもらっていないから……

 

――夫の場合、33.6%増となったとなった年金がもらえるのね

――月16万円だった年金は月21.3万円になって、その4年分だから……1,000万円以上!

 

そんな皮算用をする妻。不幸はあったものの、生命保険の保険金がおりたような感覚でしょうか。「これで生きていける」と意気揚々と年金事務所に向かいます。

 

しかし実際に受け取った年金額をみて、ふと違和感を覚えるかもしれません。

 

――あれ、思っていたよりもずっと金額が少ない

 

妻が受け取った「未支給年金」は760万円ほど。想定していた金額よりも250万円ほど少なかったのです。もう一度、年金事務所に向かい疑問をぶつけると、思いもよらぬ事実を知らさせます。

 

繰下げ受給中の夫が亡くなった場合、その妻は未支給年金を請求できますが、「65歳に受給を開始していれば受け取れるはずだった年金」は考慮されません。また同様に遺族が請求できる「遺族厚生年金」についても、65歳時の年金額に対して算出された金額を受け取ることになります。これは繰下げ増額された年金を受け取っている最中に亡くなっても同じです。

 

このように年金の繰下げのメリットは、「年金を受け取る人だけ享受できる」ものであり、遺族は関係ないと考えておきましょう。

 

[資料]

総務省『家計調査 家計収支編』(2023年平均)

総務省『労働力調査』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』