出世街道を順調に歩んできた「勝ち組サラリーマン」の給与額は、平社員とは雲泥の差。周囲から羨望の眼差しが注がれることでしょう。しかし、そんな人が将来手にする年金額にも羨望の眼差しが注がれるかといえば、そうではないようです。本記事では年収の異なる3人のサラリーマンの年金見込み額について、FP1級の川淵ゆかり氏が比較・解説します。
膝から崩れ落ちました…年収1,500万円の59歳・勝ち組サラリーマン、見下していた年収500万円の幼馴染の〈年金見込み額〉を知って悲鳴「なにも報われない」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収別に年金を計算して比較

それでは、実際に3人の年金を計算して比較してみましょう。

 

年金を計算するためには、報酬月額から当てはまる標準報酬月額を求めないといけません。まずは、単純に年収から月額を計算して、厚生年金保険料額表(令和5年度版)から標準報酬月額を求めます。

 

Aさん 年収 500万円の場合

月平均額:約41万6,000円 24等級 標準報酬月額41万円

 

Bさん 年収1,000万円の場合

月平均額:約83万3,000円 32等級 標準報酬月額65万円

 

Cさん 年収1,500万円の場合

月平均額:約125万円 32等級 標準報酬月額65万円

 

標準報酬月額には上限があるため、報酬月額が63万円以上の場合は、いずれも32等級の標準報酬月額65万円となります。なお、毎月の保険料もこの標準報酬月額から計算しますので、BさんもCさんも同じ厚生年金保険料を払っていることになります。Cさんは「なんで俺とBが一緒なんだ」と驚いていました。

 

年金もこの標準報酬月額を使って計算してみましょう。2003年3月以前の平均標準報酬月額まではわかりませんので、単純に加入の全期間を前述の『(ii)2003年4月以降の被保険者期間』の計算式を使って計算してみます。

 

Aさん 年収 500万円の場合

標準報酬月額41万円× 5.481/1,000×38年(22歳~60歳)×12ヵ月
=約102万4,000円

 

Bさん 年収1,000万円の場合

標準報酬月額65万円× 5.481/1,000×38年(22歳~60歳)×12ヵ月
=約162万4,000円

 

Cさん 年収1,500万円の場合

標準報酬月額65万円× 5.481/1,000×38年(22歳~60歳)×12ヵ月
=約162万4,000円

 

上限がありますので、年収が1,000万円でも1,500万円でも同じ年金額になってしまいますね。さらに年収500万円の人と比べると差額はわずか60万円。月額では5万円しか変わりません。

 

Cさんは「あんなに控除で引かれてきたのに。俺の3分の1しか年収がない人と月にたったの5万円しか変わらないなんて……。これじゃあ、なんにも報われない……」とショックのあまり、膝から崩れ落ちてしまいました。

 

ちなみに比較しやすいように、年収750万円のケースでも計算してみましょう。年収750万円の場合の標準報酬月額は、31等級で標準報酬月額は62万円となります。

 

年収 750万円の場合

標準報酬月額62万円×5.481/1,000×38年(22歳~60歳)×12ヵ月
=約154万9,000円

 

以上を基礎年金と合わせて、一覧にまとめてみました。

 

出所:筆者作成
[図表]年収別年金額 出所:筆者作成

 

あくまでも概算での計算です。給与やボーナスを過去までさかのぼって計算するのは実際には困難です。くわしく知りたい方は、日本年金機構から毎年届く「ねんきん定期便」を参考にするか、日本年金機構の「ねんきんネット」を利用するようにしてください。