年齢を重ねるなかでだれもが気にする「親の介護」。介護はいつはじまるか分からないからこそ、親がまだ元気なうちから、資産状況などを事前に把握しておくことが大切です。そこで今回、母親の介護に困るAさんの事例をもとに、親子間でやっておきたい事前対策について詳しくみていきましょう。FP Office株式会社の中洞智絵FPが解説します。
年金月16万円の75歳母「老人ホーム」入居検討→実家売却のつもりが…まさかの事態に46歳長男「なにかの間違いだろ?」【FPが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「要介護認定」が出たAさんの母

地域包括支援センターの窓口で相談をすると、担当者はAさんの母にどの程度サポートが必要かチェックします。

 

その結果、「要介護認定を取りましょう」ということになりました。要介護認定を取ればケアマネージャーがついてくれるようで、県外に住むAさんにとっても安心です。

 

その後無事に要介護認定が出たAさん母は、週に2回ヘルパーが自宅に来てくれるようになりました。当面は配食の手配などを行い、Aさん自身は月に1回程度帰省して帰って様子を見ることに。実家を売却し施設に移ってもらう話については、「この状態の母に言ってもしょうがない」と思い、心にしまいました。

不動産業者から告げられた「衝撃の事実」

上記の生活にも少し落ち着いてきたころ、Aさんは母を施設に入れるべく、そろそろ実家売却に向けて動き出しました。

 

不動産業者を訪れ、「実家を売って母を施設に入れたいのですが」と相談したところ、担当者から衝撃のひと言を言われてしまいました。

 

担当者:「売却を希望されているご実家の所有者はどなたですか?」

 

Aさん:「母です」

 

担当者:「なるほど。お母さまは認知症とお聞きしましたが」

 

Aさん:「はい」

 

担当者:「とても言いにくいんですが……認知症と診断されてしまうと、『本人に判断能力がない』として、財産の処分を行うことができないんです」。

 

Aさん:「えっ?」

 

担当者:「ですので、売却するには『成年後見制度』ですとか、そういったものを使うしかないのですが……」

 

これ以降のやり取りは頭が空っぽになり、耳に入りませんでした。

 

え、売却できないの? なにかの間違いだろ……? いまのままの生活を続けるのは自分の体力的にもしんどい。だけど、放置するわけにもいかない。家に引き取るといっても家族は疲弊してしまうだろうし、母にとってもストレスだろう。自分はこれからどうしたらいいんだ……。

 

悩んだ末、Aさんは筆者のFP事務所を訪れたそうです。