年齢を重ねるなかでだれもが気にする「親の介護」。介護はいつはじまるか分からないからこそ、親がまだ元気なうちから、資産状況などを事前に把握しておくことが大切です。そこで今回、母親の介護に困るAさんの事例をもとに、親子間でやっておきたい事前対策について詳しくみていきましょう。FP Office株式会社の中洞智絵FPが解説します。
年金月16万円の75歳母「老人ホーム」入居検討→実家売却のつもりが…まさかの事態に46歳長男「なにかの間違いだろ?」【FPが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症になるとできなくなること、6つ

母親の認知症が発覚した場合、とてもショックだと思います。

 

しかし、すでに起きてしまったことですので、やはり適切に対応をしていかなくてはなりません。Aさんがなにを準備していれば困らなかったか、そしてこれからどういった対策が必要かについて、一緒に確認していきましょう。

 

あらかじめ認識しておきたいのは、認知症は「病気」であるということです。ダイエットなどのように、本人の努力で改善されるものではありません。できることが1つずつ減っていく親を目の当たりにすると、その事実をすぐには受け入れられないのは当たり前です。

 

しかし、受け止めきれない感情を親にぶつけるなどしてしまった結果、余計に症状が強く出るケースもあります。そのため、認知症が発生した場合、家族の理解が必須です。

 

家族が認知症になったら、まずは地域包括支援センターへ

家族が認知症になった際は、Aさんのように、まずはお住まいの管轄の地域包括支援センターに相談しましょう。そこで介護申請を行うと、その後、認定調査と主治医の意見書をもとに審査され、要介護度が決定されます。

 

要介護認定を受けることにより、国の介護サービスが1割負担で受けられるようになります。

 

ただし認知症の場合、身体機能に問題が少ない場合もあり、「介護が必要ない」あるいは要介護度が低く判断されるケースもあります。そのため、現在の状況を医師や担当者に具体的に説明することが大切です。

 

また、担当してくれるケアマネージャーの専門によっても個別の対応が異なるため、認知症に詳しい担当をお願いすることも有効です。

 

家族が認知症になると、下記のようなことができなくなります。

 

①金融機関の取引……銀行預金の引き出し、振込、解約など全般

②証券口座の取引……株や債券などの取引全般、NISAも含む

③不動産の取引……売却、購入、貸す、借りる、建て替え、測量、工事など

④贈与……現金、住宅や教育などの資金贈与

⑤相続関連……遺言を書く、修正、信託など

⑥生命保険……契約締結、契約変更、解約など

 

特に銀行や証券会社といった金融機関は、預けている本人の財産を適切に守る義務があります。身内であってもお金を勝手に使い込むケースもあるため、金融機関は慎重な対応を取らざるを得ないのです。

 

口座が凍結されたあとは、不動産会社が言っていたように「成年後見制度」を活用するほか方法がありません。しかし、後見人の選定に長い時間がかかることや、ランニングコストがかかることから、すぐに活用を決めるのも難しいでしょう。

 

したがって、家族が認知症に“なったあと”ではなく、“なる前”の準備が非常に大切です。