「主婦年金廃止」でどれほど負担増となるのか?
総務省『2023年 家計調査 家計収支編』によると、専業主婦世帯の平均月収(勤め先収入)は53万5,976円。それに対し、共働き世帯の平均月収は69万0,701円。当然のことではありますが、共働き世帯のほうが1.3倍の収入があり、経済的に余裕があります。それだけに第3号被保険者制度が廃止になった場合の負担増は、専業主婦世帯に大きなインパクトを与えます。
実際にどれほどの負担増となるのか、考えてみましょう。
まず専業主婦の場合、仮に第1号被保険者と同額の保険料を負担すると、保険料は月1万6,520円、年間に換算すると19万8,240円(2023年度)です。さらに健康保険料を払う必要も出てくるでしょう。自治体によりますが、保険料は年間7万円ほどであり、合計の負担額は25万円強にもなります。もし専業主婦の期間が30~60歳の30年間だとすると、その負担額は750万円にもなります。
さらにパート妻の場合、いわゆる「年収の壁」を意識して働くことも、まったく意味がなくなります。東京都在住、40歳のパートタイマーで月収8万円だった場合で考えてみましょう。概算ではありますが、「健康保険」月3,900円、「厚生年金」月8,052円、「介護保険」月709円、「雇用保険」月480円が天引きされるようになり、年間の負担額は15万7,692円になります。
さらに2024年10月からは社会保険(厚生年金保険・健康保険)の加入要件が拡大し、従業員数51人以上の企業で働く場合、「所定労働時間が週20時間以上」「所定内賃金が月額8.8万円以上」「2ヵ月を超える雇用の見込み」「学生ではない」といった要件を満たした場合、社会保険に加入しなければならなくなります。つまり第3号被保険者の対象は、さらに減ると考えられるのです。早ければ2025年にも主婦年金が廃止されるという話が現実味を帯びているのは、このような事情もあります。
ただ第3号被保険者とひと括りにして議論されていますが、第3号被保険者である理由はさまざまで、出産や育児を理由に働けないケースもあれば、配偶者が専業主婦(主夫)であることを望んでいるケースもあります。また制度の廃止による影響は世帯によってさまざまで、なかには負担増に耐えられない場合もあるでしょう。そのような世帯に対してどのような支援が適当か、廃止/見直しとともに考えていく必要がありそうです。
[参考資料]
政府広報オンライン『会社員などの配偶者に扶養されている方、扶養されていた方(主婦・主夫)へ 知っておきたい「年金」の手続』