本来、生命保険契約では、契約時に契約者によって指定された受取人が生命保険金を確実に受け取れる仕組みとなっています。しかし、今回紹介するFさんのケースでは、契約者(故人)の思いが無下にされる結果となりました。本記事では、実際にあった事例とともに生命保険契約の注意点について、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
面倒を看てくれた長男夫婦へ。80代亡き母が用意した「生命保険金700万円」…ちゃっかり者の妹が“保険会社のルールに則って”根こそぎ奪えてしまったワケ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

生命保険金の受取人が…

Fさんは大学卒業後、大手銀行に就職し、実家近くのいくつかの支店で、投資信託や保険などの金融商品を販売、住宅ローン相談を含む個人顧客対応でキャリアを積み、現在は銀行本部のとある部門に勤務しています。仕事において、丁寧なコンサルティングと深い知識で顧客からの厚い信頼を得て、優秀な成績を挙げ、また両親と祖母が暮らしやすいようにと、彼女が資金提供し、ローンも利用して古くなった実家を建替えするなど、家族思いで申し分のない人です。

 

そんな彼女が、慌てた様子で筆者のもとへ相談にやってきました。

 

「死亡保険金受取人が、被保険者より先に亡くなった場合、特に変更手続きをしていなければ、受取人の相続人全員が受け取りますよね? 私、いままでお客様にもそう説明してきたんです!」

 

一体、なにがあったのでしょうか。

 

※以降は、敬称を略して経緯を説明します。プライバシーを考慮し、実際の相談内容から一部変更しています。

家族関係は良好だが…問題は叔母(父の妹)

<事例>

 

相談者:Fさん 36歳女性 大手銀行勤務 

 

Fさんの家族:

祖母 83歳 (20XX年6月10日ご逝去)(父方の祖母、保険契約者兼被保険者)
父  63歳 (祖母と同年6月1日ご逝去)(本件、保険契約の死亡保険金受取人)
母  60歳 (パート)
叔母 62歳 (無職)


Fさんは、本店に転勤するまで実家で両親、祖父母と一緒に暮らしてきました。

 

祖父は10年ほど前に亡くなったとのことですが、母は結婚以来ずっと舅姑である祖父母と同居し、祖父の介護、高齢の祖母の面倒もみてきたとのことです。
 

父には妹(Fさんの叔母)がいて、祖父が亡くなった際、住んでいた実家(当時評価額1,500万円程度)は父が相続し、すでに別居していたFさんの叔母は、祖父の死亡保険金や預貯金から同程度の金額を相続していました。
 

献身的に祖父母を支えてきた母に対し、別居して気ままに過ごして、なにかと実家に頼る独身の叔母の態度を見ながら育ってきたので、Fさんは自分がしっかり母を支えたいと常々考えるようになりました。こうした背景により、高齢になっても住みやすいよう、5年前に古くなった実家の建替えもしていたのです。