本来、生命保険契約では、契約時に契約者によって指定された受取人が生命保険金を確実に受け取れる仕組みとなっています。しかし、今回紹介するFさんのケースでは、契約者(故人)の思いが無下にされる結果となりました。本記事では、実際にあった事例とともに生命保険契約の注意点について、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
面倒を看てくれた長男夫婦へ。80代亡き母が用意した「生命保険金700万円」…ちゃっかり者の妹が“保険会社のルールに則って”根こそぎ奪えてしまったワケ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

保険契約の内容に変更があったときは、遅滞なく手続きを!

保険法など法律の規定があったとしても、保険会社によって取り扱いが異なるので、今回、X生命以外の保険会社で契約していれば、Fさんとお母様が350万円ずつ受け取っていた可能性があります。

 

死亡保険金受取人(父)が亡くなり、契約者(祖母)も高齢で弱っているといった状況で、遅滞なく保険金受取人の変更手続きをするのは難しく、短期間で相次いで亡くなってしまったのでこのような事態を避けるのはなかなか厳しいことかもしれません。

 

Fさん自身も銀行窓口で保険販売をしていたので、保険会社の約款の規定に従うことは理解していて、なによりもお客様に間違った説明をしていなかったことがわかってホッとしたと同時に、改めて勉強になったと話していました。

 

しかし、これまで祖父母の介護などすべて母に任せっきり、独身の娘気分が抜けず兄である父に頼りながら気ままに暮らしてきた事に加えて、X生命の約款により権利があるとはいえ、祖母は本来父を受取人にしていた保険金700万円分を黙って受け取っていた叔母の振るまいを許せないようです。

 

つい最近(叔母が)病気で脚が不自由になってしまい、また懲りもせず、「普段の買い物をしてほしい」「介護施設へ入居を検討しているからそのときは保証人になって欲しい」と頼んできたそうです。Fさんは、「(買い物は)保険金でたくさんお金を持っているんだから、高くついても宅配で頼んでほしい。ホーム入居の際の保証人には絶対にならない!」と断ったとのことでした。

 

お祖母様、お父様を亡くされたFさん、お母様は、財産を一切得られなかったそうですが、叔母様との関係もキッパリと手放せたことは大きいようです。

 

筆者には「くれぐれも契約内容に変更があったら遅滞なく手続きすることと、加入している保険の内容はしっかり把握することの大切さを伝えて欲しい」と念押しされました。
 

 

 

 

伊藤 江里子
FP事務所 夢咲き案内人オカエリ 代表