「大学を卒業したが働かない(働けない)子どもがいる。定年後私たちの家計は破綻しないだろうか?」「小学生の子どもが学校に行けず、日中面倒を見なければならない。在宅勤務ができない仕事なので退職した」不登校・ひきこもりの子どもがいる家庭が増え、この問題は社会全体でも大きな関心を集めています。本記事では、Oさんの事例とともに、子どものひきこもり問題を解決に向かわせる方法について、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
親のお小遣いで週3通うジムで汗かき、毎朝ベーグルを手作り。丁寧な暮らしを送る「無職の30代長男」…年金生活に突入する年収900万円だった60代・元エリート会社員父の悲鳴【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

不登校、ひきこもり、ニートが家計におよぼす直接的な影響

「不登校児童生徒」とは?

不登校児童生徒は、

 

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの

 

と文部科学省の調査※1で定義されています。2022年度(令和4年度)の文部科学省調査※2によると、不登校の小中学生は29万9,000人を超えており、その数は過去最高を記録しています。29万9,000人のうち中学生は19万3,936人(前年16万3,442人)と、小学生より多い人数となっていますが、小学生10万5,112人(前年8万1,498人)は29%増加率で、教育環境や心理的要因、家庭の事情などが影響しているとされています​。

 

不登校は子どもだけでなく、家族にも精神的負担がかかり、家計にも影響を与えます。フリースクールなど学校以外の教育手段にかかる費用やカウンセリング費用、子どもが家で過ごすことでかかる光熱費などの支出が増加する一方で、時短勤務や退職により、親の収入が減少するケースも少なくありません。

 

経済面・精神面で負担がかかりますが、無料で相談できる行政機関、自治体によってはフリースクールの補助があります。公的支援や地域のサポートを活用し、家族全体で協力し合うことで軽減することも可能です。

 

「ひきこもり」と「ニート」

子どものひきこもり、ニートも経済面、家族の精神面に大きな影響をおよぼします。厚生労働省の「ひきこもり支援施策」や関連ガイドライン※3によると、ひきこもりは、

 

さまざまな要因によって社会参加(就学、就労、家庭外での交友など)を回避し、6か月以上家庭にとどまり続けている状態

 

と定義されています。また、ニート(NEET)とは、「Notin Education, Employment, orTraining」の略で、15~34歳の若年者のうち、就学・就労しておらず、職業訓練も受けていない人々を指します。ニートは就学・就労していない人を指すので、充電期間、家族の介護などにより、就学・就労しない、あるいはできない事情がある人も含まれます。また資産家で、働かなくてもいいと考える人もいると考えられます。

 

しかし、ひきこもりは社会的な孤立や精神的な問題も含むため、ニートに比べるとより社会的支援が必要と考えられているため、不登校と同様に行政などの公的機関やNPO・地域団体がさまざまなサポートを提供しています。