米国の地方のリジョナル・バンクスの苦境
2023年3月、突如、シリコンバレー銀行など3行が取り付け騒ぎで破綻退場を余儀なくされた。これに対するFRB以下金融当局の態度はまったくお話にならないお粗末さであった。
そもそも1年間で金利を5%も引き上げておきながら、傘下の金融機関のマチュリティー・トランスフォーメーションの惨状をまったく把握できていなく、検査にもろくに手を付けていなかったことが判明した。
金融機関は短期借り、長期貸しのマチュリティー・トランスフォーメーションが基本のビジネス・モデルである。短期金利が一気に5%も上昇すると、銀行は短期借りで高いマネーを調達(低い金利の預金は流出)する一方で貸し出しのほうは低い金利のままという状態に置かれる。
低金利時代に余資を大量の債券投資に振り向けていたシリコンバレー銀行は、金利上昇による債券価格の急落でバランスシート上の痛手を受けた。
しかし、債券は基本的には期日までホールドすれば100%で戻ってくるので、債券価格の下落による損失はペーパー・ロスで実損ではない。
ところが低利の預金が大量流出し始めると、銀行は資金調達に窮し、市場で保有債券を売らざるを得ないところに追い込まれた。その結果ペーパー・ロスは実損になってしまった。
その損失の実態がSNSで一気に世間の知るところとなり、預金流出が加速し、たった3日間で破綻に追い込まれた。
破綻した3行の、預金保険対象(25万ドル)を超える預金者の救済が政治問題になる。
預金保険対象以上の預金は預金者の責任で損失は預金者自身が被るというのが、米国預金保険制度の原則である。ところが政治的なバックラッシュを恐れた金融当局は、議会に諮ることもせずに、うやむやに政府が全額補填したのである。
2008年のリーマン・ショックに際し「TOO BIG TO FAIL」として巨大金融機関を税金(タックスペイヤーズ・マネー)で救済したことは、金融当局の大きな失敗であり、その後、議会で同様の事態が起こらないようにドッド・フランク法が成立したが、トランプ政権時、共和党の圧力で法律の力は緩められウォーター・ダウン(水で薄められた)レジスレーション(立法)となり、今回の政府全額補償につながったのである。
地方の中小金融機関は今日も預金の流出が続いている。
米国で1年間に1兆ドルのM2減少をみていることでも明らかである。
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