「なんとなく」でうまくいったFXデビュー
33歳の佐藤太郎さん(仮名)は、大学卒業後に県職員として働く、2歳と5歳の子どもを持つパパ。これから子どもの教育費などお金がかかるようになる時期ですが、佐藤さんには投資でちょっとした苦い経験がありました。
実は、過去にFXで200万円近くの大金を溶かした経験があるのです。
FXを始めたのは7、8年前、就職して仕事にも慣れてきた頃でした。付き合っている彼女と結婚することが決まり、本業以外にもっとお金を稼ぎたいと考えたのがきっかけです。FXで利益を積み重ねて、これから生まれてくる子どもの教育資金にできればと考えていました。
そして、実際にトレードを始めてみると、驚くことに最初の数ヵ月で50万円の投資資金が倍以上になったといいます。「FXって簡単じゃん」と感じたという佐藤さん。しかし、そのトレード内容は決して褒められたものではありませんでした。
トレードをするのは、仕事から帰って時間があるときで、主に夜の時間帯。相場の流れに合わせて「なんとなく」で高いレバレッジでポジションを持ち、上手く利益が乗ればすぐに利益を確定して、逆行したときはプラスになるまで耐えるという形。
これは、もし相場が逆方向に動き続けると損失が大きく膨らみかねない、非常にリスキーなやり方です。初めのうちは相場が逆行しても運良くすぐに戻ることが続いていましたが、それがいつまでも続くことはありませんでした。
その後は、コツコツと利益を積み重ねるものの予想が外れたときにドカンと負けるという、俗に“コツコツドカン”と呼ばれる負けパターンを繰り返すようになります。上手くいけば1日に数万円勝ちますが、一度の負けで利益が吹っ飛んで資金が減り、一時100万円を超えていた運用資金は、いつしか底をついてしまったそうです。
佐藤さんは、失った資金を取り返そうとFX口座に追加で入金します。しかし、最初に大きく勝っていたこともあり、損切りをしないスタイルを変えることはありませんでした。結局、3年ほどズルズルと同じようなトレードを続け、何度も資金がなくなっては入金を繰り返した結果、「トータルで200万円は負けています……」とのこと。
最終的には、1人目の子どもが生まれたタイミングで、ようやくFXをあきらめる決断ができたそうです。
これからお金が必要になっていくなかで、「子どもの養育資金に」と蓄えていた貯金を失ってしまった佐藤さん。FXで失敗してしまった要因はどこにあったのでしょうか。
ビギナーズラックが悪い癖につながった可能性
佐藤さんがFXで大きな失敗をしてしまったのは、“コツコツドカン”という定番の負けパターンに陥ってしまったためです。これには、FXデビュー時に「なんとなく」で上手くいったことが大きく関係していると考えられます。
当時の佐藤さんは、なんとなくポジションを持って利益が乗ったときはすぐに利益確定し、相場が逆方向に動いたときは損切りをせずに、我慢してると助かるというトレードをしていました。そして、相場が逆方向に動いても、相場が戻ってきて助かるという経験を何度もしています。
損切りせずに助かったという成功体験があると、同じような状況のときに起こりやすいのが「前は損切りしなくても助かったよな」という思考。
すると、ダメだと分かっていても損切りができなくなり、ドカンと大きな損失を出してしまうわけです。ビギナーズラックによって一時的にプラスになったとしてもトレードに悪い癖が付くため、多くの場合、長期的にはマイナスに陥ります。もちろん勝つか負けるかも重要ですが、FXに取り組んでいく上では「どう勝つか」についても強く意識しておきたいところです。