厚生労働省によると、2021年、要支援・要介護者は約690万人。その数は年々増えているといいます。なかには認知症を発症しているケースも。症状が進んでいくと、在宅での介護は難しくなり、施設への入居が現実的になっていきます。ただそこに複雑な気持ちを抱える人もいるようです。みていきましょう。
「イヤだ、イヤだ」と泣き叫ぶ80代母を一人置いて…50代長女「介護に限界」と〈老人ホーム〉に頼ったが、心残りに涙

家族が老人ホームに入居…きっかけのトップは「認知症」

2023年、日本の高齢化率は29.1%と過去最高を更新しました。今後、2040年には35%、2055年には38%に達すると推計されています。さらに少子化は想定以上に進んでいて、今後出生率が改善しなければ、さらに高齢化率は上昇することが見込まれています。

 

高齢化の進展とともに増加するといわれているのが、認知症患者です。『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』による推計では、65歳以上の認知症患者数は、各年齢の認知症有病率が一定の場合、2025年には約675万人、有病率18.5%と、高齢者5.4人に1人ほどが認知症になると予測されています。

 

家族が認知症を発症したら。症状が進んでいくと、介護なしでは生活が難しくなります。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、介護が必要となった主な原因で、最も多いのが「認知症」で16.6%。次いで「脳血管疾患(脳卒中)」で16.1%、「骨折・転倒」13.9%、「高齢による衰弱」13.2%、「関節疾患」10.2%と続きます。

 

在宅で介護をする場合に、誰が介護をするのか問題ですが、最も多いのが「配偶者」で全体の22.9%。「同居する子」16.2%、「事業者」が15.7%と続きます。また男女別にみていくと、「女性」が68.9%と圧倒的。また同居する主な介護者を年齢別にみていくと。最も多いのが「60代」で29.1%。次いで「70代」が28.5%、「80代以上」が18.4%、「50代」17.2%と続きます。

 

認知症患者の介護は家族でも大変、とはよく耳にします。記憶や判断力の障害が起きているもののその他は健康そのものという段階だと、徘徊したり、暴れたり……介護者も体力を使います。徐々に体力も衰え、日常生活に支障をきたしてくると、食事、風呂、トイレ、あらゆるシーンで手を貸さないといけなくなります。

 

――大切な家族だけど、もう限界、もう無理!

 

自宅での介護に限界を感じたとき、老人ホームへの入居が現実的になります。株式会社LIFULL seniorが行った『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』によると、入居を決めたきっかけトップは「認知症」で46.0%。その症状で施設への入居のきっかけになったのが「排泄の失敗」で32.3%。「お金の管理ができない」29.0%と共に、高い割合を占めています。