年を重ねていくと健康不安が大きくなり、さらにパートナーを亡くして1人暮らしとなると、「この広い家に1人で住むのはしんどい」と感じることがあります。そんなとき、選択肢のひとつになるのが老人ホーム。介護も医療も充実している施設であれば、終の棲家としても安心です。ただ、その安心が「絶対」とは言い切れず、せっかく入居したのに退去してしまうケースも珍しくはありません。みていきましょう。
年金月20万円・79歳の元勝ち組「老人ホーム入居後」のまさかの事態

終の棲家と思っていたが…入居から1年3ヵ月で退去

理想の棲家で穏やかな生活を送っていた男性。しかし入居から1年3ヵ月で退去を決めたといいます。なにかトラブルにでも?

 

――読み違えたのが立地と入居者

 

ファッションやカルチャーが好きだという男性。老人ホームに入居する前は、お気に入りのショップに2週間に1度は訪れ、毎日のようにジャズ喫茶に通うなど、都会的な生活を送っていたといいます。一方、入居した老人ホームがあるのは、人里離れたシーサイド。確かに眺望は素敵ですが、最寄りのコンビニまで車がないとアクセスも難しいというロケーションでした。

 

――入居者もいい人ばかりなんだけど、趣味がまったく合わず

 

80歳を前にして、いまなお若々しい趣味をもつ男性。入居者と話をするのも大変だったようです。施設もサービスも高級かもしれないけど、周囲から遮断されたような環境に、息が詰まりだったと振り返ります。

 

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の転居に関するアンケート調査』によると、「今入居している施設が1施設目」が61.6%、「2施設目」が28.4%、「3施設目」が7.2%と続きます。数としては少数派になるものの、老人ホームの退去、転居は珍しいことではないようです。

 

老人ホームの転居に際し、入居一時金は未償却部分は返還されます。仮に男性が入居していた施設が初期償却率20%、償還期間5年だとすると、入居一時金として用意した8,000万円は、1年後の退去で5,120万円だけ戻ってきます。およそ3,000万円は戻ってこない計算です。

 

退去に際して、費用面でデメリットが生じる老人ホーム。見学を十分にして、入居ギャップが生じぬようにしたいものです。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の転居に関するアンケート調査』