シングルマザーの貧困が社会問題化している昨今。収入の少なさに物価高騰も重なり、母と子でレジャーに行くといった、ほんの少しの贅沢をすることも厳しいという現実があるようです。本記事では、Aさんの事例とともに、シングルマザーの家計の実態やいざというときに助けになる「生活保護」について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
手取り月14万円の29歳・シングルマザー、“生活保護”を羨むワケ…「娘をディズニーランドに連れていきたい」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

シングルマザーが受け取れる生活保護の額

生活保護の受給状況は、次のように母子世帯では「受給している」が9.3%となっています。

 

[図表3]母子世帯の母の生活保護の受給状況

 

また、シングルマザーの場合、受け取れる生活保護費の額は居住する級地区分によって次のようになります。

 

(例)東京都23区内の生活保護費を計算【令和5年度】
[子ども一人(3~5歳)の場合]
・生活扶助基準額:7万3,520円
・児童養育加算児童の人数1名:1万190円
・母子加算児童の人数1名:1万8,800円
・住宅扶助東京都板橋区の家賃補助:5万3,700円
 合計15万6,210円

 

ちなみに、児童養育加算はお子さんが18歳になる年度の3月末日(高校卒業の年)まで、義務教育のあいだは教育扶助が加算されます。生活保護を受けている母子家庭でも児童扶養手当は受け取ることができますが、生活保護費の額からは控除されます。

 

これを知ったAさんは驚愕しました。

 

「私が働いているあいだ、代わりに家で娘をみてくれる人はいないので、寂しい思いをさせています。でも生活保護費では、私がひと月に稼ぐ以上のお金を受け取れるんですね……。ディズニーランドも連れていきやすいのかな……」

 

Aさんはそういいますが、生活保護を受けることによって、住む場所が制限されたり、クレジットカードが作れなくなったりするなどといったデメリットがあることも知っておきましょう。あくまでも前述したように、病気やケガで働くことができなくなってしまったり、収入があっても生活できなくなったりした場合の手段のひとつとして活用することを推奨します。

シングルマザーのためのそのほかの制度

ひとり親世帯にはさまざまな福祉関係の公的制度があります。ですが、認知度も低くよく知られていない制度も多くあります。そこで「利用したことがない、そのうち制度を知らなかった」といわれる割合が5割を超えるものを抜粋してご紹介します。

 

・母子(父子)福祉資金(無利子貸し付け)
・生活福祉資金
・養育費等相談支援センター
・子どもの学習支援
・高等学校卒業程度認定試験合格支援
・生活困窮者自立支援制度
・こどもの未来応援国民運動ホームページ

 

上記のうち「こどもの未来応援国民運動ホームページ」では、国や自治体の支援や全国のこども食堂の紹介も行っていますので、必要に応じて利用しましょう。

 

シングルマザーは仕事を探すのに苦労するケースも少なくありません。厚生労働省では子育てと仕事を両立したいお母さん向けに「マザーハローワーク事業」を全国に展開しています。シングルマザーだけでなく、子育てが落ち着いたあとの再就職も相談できます。

 

ひとり親世帯はなにかと大変ですが、無理せず制度を利用して、お子さんとのよりよい暮らしを手に入れてください。

 

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表