住宅購入はライフイベントのなかでも最も大きな買い物のひとつといわれています。購入に際しては住宅ローンを活用することが大半であるため、夫婦でよく相談して諸々を決めるべきなのですが、ここで夫婦間の揉め事に発展するケースも多いようです。本記事ではKさん夫婦の事例とともに、住宅購入時の家族間のコミュニケーション不足に潜むリスクについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収1,310万円の30代夫婦、6,000万円の住宅ローン審査に落ちて呆然…銀行員から「こっそり提案されたこと」、その後の顛末【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

不倫を繰り返す幼稚な夫の末路

そのやり取りのなかで、こんなことが書いてありました。

 

不倫相手が、夫Mさんが妻と共有名義で家を買うことを嫌がっているのです。これに対して夫は言い訳を繰り返します。

 

「家なんて俺は欲しくないのに、妻が強引に買おうとしている」

 

「離婚をするともう告げたのに、強引に俺名義で家を契約した」

 

「キャンセルしてくる」

 

「結婚したらマンションを買おう」

 

夫の幼稚さに呆れてしまいます。住宅ローンの審査がNGだった自分がなにをいっているのか……。

 

妻Kさんはさすがに今回ばかりは怒り心頭です。審査が通らない夫を許し、夫の実家の近くに土地を買い、自分は通勤に1時間以上もかかることも覚悟したというのに、夫は不倫相手とのママゴトに夢中になるばかり。不倫を隠し通せるほどの能力もないのかと一気に気持ちが冷めてしまいました。

 

妻Kさんは、このやりとりをすべてスクリーンショットとして残し、夫に突きつけました。最初は否定していましたが、不倫相手の女性への損害賠償請求の話になると慌てはじめ、また仕事を辞めなくてはいけなくなると泣きついてきました。

 

「離婚するし、あなたたち2人は仕事を辞めて結婚でもすればいいよ。でもお金はしっかり払ってもらいます」

 

そういって、妻Kさんは離婚することにしました。

問題は契約した家のこと

離婚するとなったら、わざわざ郊外に家を買う必要はありません。それどころか、別れた夫の実家の近くに1人で住むなんてありえません。

 

しかし自宅はすでに基礎工事が始まっています。キャンセルはできるのでしょうか。怖くて担当営業マンには言えませんでした。

 

FPに依頼し、恐る恐るキャンセルの手続きを訊いたところ、こんな回答でした。

 

・着工しているため、違約金というよりも損害賠償をしなければならない

・建材費や人件費だけではなく、本来メーカーが得られていたはずの利益も弁償する必要がある

・銀行はすでに融資が実行されているためキャンセルは不可能。一括返済を求められる

 

そして結論としては、

 

・このまま家を完成させ、すぐに売却するか賃貸物件として貸し出すほうが損害は少ない

・賃貸にする場合には住宅ローンを事業ローンへ借り換えする必要がある(金利は3倍近く高くなり返済期間も短くなる)

・賃貸にした場合はローンを抱えているため、今後あらたな住宅ローンを借りられなくなる

・夫の不貞行為によって損害を受けているので、不倫相手の女性への慰謝料の請求額に若干反映できるのかもしれないが、300万円以下である

・新築後すぐに売却しても、オーバーローンとなり、住宅ローン分を相殺できるのがせいぜいで、その場合は自己資金の1,000万円は戻らない損失となる

 

ということでした。