高齢者の住まいとして存在感が増している「老人ホーム」。なかでも特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」は、コストが安いことからも人気です。一方で入所待ちが当たり前で、1年以上も「アキ」を待っているというケースも珍しくはありません。そんな特養の入所待ち。都道府県別に地域の実情をみていきましょう。
都道府県別「特養入所待機者」調査…全国で25万人!「入りたくても入れない」地域の実情

入所待ちは全国で25万人!「特養入所待機者」都道府県別にみていくと

もともと特養の入所条件は要介護1以上でした。しかし入所待機者が多く「入所したくても入所できない」という大問題が……そのため、2015年に入所条件を要介護3以上に引き上げ。それにより、入所待機者は52万人から36万人に大きく減少しました。

 

厚生労働省『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』によると、特養の入所待ちは25.3万人。前回2019年調査と比べて13.5%の減少となりました。また入所待ちのなかで、在宅で待っている人は10.6%。前回調査から9.1%の減少となっています。

 

特養の入所待ちの列は確実に短くなっているものの「入りたくても入れない」という状況が解消に至るまでは、まだまだ道のり半ばといったところ。高齢化の加速に対し、今後も改善を図っていけるかはあまりに不透明だといえるでしょう。

 

特養の入所待ちの長い列。さらに都道府県別にみていくと、最も待機者が多いのは「東京都」で2万1,495人とダントツ。以下「神奈川県」「兵庫県」「大阪府」「千葉県」と続きます。一方で待機者が少ないのが「徳島県」で1,275人。「佐賀県」「石川県」「和歌山県」「高知県」と続きます(関連記事:『都道府県別「特養入所待機者」ランキング…〈特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)〉』

 

待機者のうち、在宅待機者が多いのも「東京都」で1万0,029人。一方で在宅待機者が少ないのは「鳥取県」で286人です。

 

また特養待機者に対して在宅待機者が多い都道府県をみていくと、最も在宅待機者の割合が多いのが「山梨県」で59.1%。「京都府」「秋田県」「岐阜県」「神奈川県」と続きます。さらに要介護3以上の人に対して待機者が多いのも「山梨県」で26.7%。続いて「滋賀県」が22.9%。「島根県」「秋田県」「広島県」と続きます。要介護3は常時介護が必要な状態で、食事や排せつ、入浴などすべてにおいて、ほぼ全面的な介護が必要となります。介護者の負担も大きくなり、在宅での介護にも限界を感じる分岐点といえるでしょう。

 

――入所したくても空きがない!

――特養のほかに入れる施設もなく、自宅で介護するしか手段がない!

――在宅の介護に限界……

 

特養入所待機者とその家族のなかには、そんな悲鳴をあげる人たちもいることでしょう。地域によって差はあるものの、希望したらスムーズに入所というのは難しい状態であることは全国共通です。特養は優先度が高いと判断されると、入所が早まることがあります。そのため体調に変化があった場合など、細目に連絡を行ったほうがよいでしょう。

 

[参考資料]

厚生労働省ウェブサイト『介護事業所・生活関連情報検索>サービスにかかる利用料』

厚生労働省『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』