医療の発達や飽食などさまざまな理由により、長寿化が進む日本。しかしその陰で、「8050問題」「老々介護」といった問題も深刻になっています。81歳夫婦のもとで暮らす50歳の息子は、30代半ばで実家に出戻り。実家にお金を入れず、すべて自分のことに使っています。不安を抱えた夫婦に、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPはどのような助言を行ったのでしょうか、みていきましょう。
「かわいい息子。働いているだけで充分よ」…81歳“年金暮らし夫婦”と50歳“ひとり息子”の深刻な現状【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護は“体力的”にも“精神的”にも“金銭的”にも想像以上の負担

3.介護は「誰が」「どの範囲で」やるのか決めておく

現状は介護を必要としていないX夫妻ですが、近いうちに必要になる可能性が高いでしょう。そこで、誰がどの範囲で介護を担うのか、いまのうちに決めておくことが必要です。

 

「自分の介護は家族にしてもらいたい」と思う人は多いでしょう。ただ、仮にX夫妻がそれぞれを介護することになった場合「老老介護」となり、身体的負担が大きくなります。

 

そこで子どもに介護を頼む場合も多いですが、子どもにも仕事があり、仕事を続けながら介護をすると身体的、精神的な負担がかかります。とはいえ、仕事を辞めて介護をすると経済的に苦しいですし、「介護離職」には非常に大きなリスクがあります。

 

さらに、だんだんとひとりでできることが減っていく親と毎日関わり続けることは、子どもにとって想像以上のストレスです。そしてなにより、介護には「終わりがみえない」という不安がつきまといます。こうした環境が続くことにより、仲が良かったはずの親子であっても、虐待に発展してしまうというケースが、実際に起きています。

 

そこで、介護は可能な範囲でプロにお願することをおすすめします。昔と違い、いまは「介護保険制度」がありますから、家族は無理のない範囲で関わって、良好な関係を維持していきましょう。

 

介護費用、具体的にいくらくらいかかる?

介護が必要になると、月々5~6万円程度の費用が発生するほか、民間の施設へ入所するとなると月々20~40万円程度はかかります。

 

施設であれば専門のスタッフが24時間常駐しているので安心して過ごせますが、入居期間が長期化すると、貯蓄が途中で尽きてしまう可能性が高まるため注意が必要です。

 

お金に余裕がない場合は、自宅での生活を続けながら訪問介護や通所介護のサービスを利用することで、施設に入所するよりも費用を低く抑えることができるでしょう。その場合、自宅での介護が難しくなったらグループホームやサ高住などに切り替える選択肢をとることができます。

 

まずは「介護サービスにはどのような種類があるのか」を知り、事前にシミュレーションしておくとよいでしょう。また、地域ごとに独自のサービスもあるため、役所や社会福祉協議会に問い合わせてみることをおすすめします。

 

ここまで聞いた夫婦は、「息子と話してみる」と言って事務所を後にしました。