日本の上位5%といわれる年収1,000万円超の「エリート」たち……退職金も多く、定年後も“余裕の老後生活”を送っていると思いきや、実は「老後破産危機」に陥ってしまう人が少なくないと、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPはいいます。上場企業で部長職を勤めていたTさん(66歳)の事例をもとに、高所得者が老後破産危機に陥る原因と対策をみていきましょう。
年金月30万円、退職金3,200万円で「勝ち逃げ確定」かと思いきや…66歳・元エリートサラリーマンが老後「節約地獄」に堕ちたワケ【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職時の年収は1,400万円…「勝ち組エリート」だったTさん

ある日、筆者のFP事務所のもとに66歳の相談者Tさんが訪れました。現役時代の収入は十分で、退職金も申し分なく受給しているそうですが、「思っていたほど手元にキャッシュが残っておらず、これからの生活が心配だ」というのです。そこで筆者は、Tさんに詳しい話を聞くことにしました。

 

Tさんは現役時代、上場企業の準大手メーカーで営業部長職を勤めていたそうです。30代半ばまで休日返上で仕事に励んでいたため、長年パートナーもいませんでした。そうしたなか、実家に住む親からの「そろそろ孫の顔が見たい」という圧が強まったこともあり、Tさんは効率よく結婚相手を見つけるために結婚相談所へ入会。お見合いで出会った女性と38歳で結婚しました。

 

子宝にも恵まれ、結婚した翌年に第1子が、その4年後には第2子が誕生。子どもたちは2人ともストレートで大学を卒業し、子育てに特に大きな問題はありませんでしたが、晩婚のためTさんの退職後も教育資金の支払いが続く状況でした。

 

Tさんが自宅を購入したのは、第2子が産まれた翌年、Tさんが44歳のときです。家族が増えたことに加えて、奥様からの「マイホームが欲しい」という強い意向があり購入を決断しました。

 

住宅ローンについては、定年後に収入が減ったあとも払い続けることが気になったため、退職金を使って繰り上げ返済することですでに完済しています。

 

年収は50代前半から1,000万円を超えており、退職時は1,400万円ほど。退職金も3,200万円ありました。すでに子どもたちも独立済みで、住宅ローンも完済。Tさんは肩の荷がおり、「これで悠々自適な老後生活が送れる」と信じて疑わなかったそうです。

 

では、なぜTさんは筆者のところに相談にいらしたのでしょうか。