退職時の年収は1,400万円…「勝ち組エリート」だったTさん
ある日、筆者のFP事務所のもとに66歳の相談者Tさんが訪れました。現役時代の収入は十分で、退職金も申し分なく受給しているそうですが、「思っていたほど手元にキャッシュが残っておらず、これからの生活が心配だ」というのです。そこで筆者は、Tさんに詳しい話を聞くことにしました。
Tさんは現役時代、上場企業の準大手メーカーで営業部長職を勤めていたそうです。30代半ばまで休日返上で仕事に励んでいたため、長年パートナーもいませんでした。そうしたなか、実家に住む親からの「そろそろ孫の顔が見たい」という圧が強まったこともあり、Tさんは効率よく結婚相手を見つけるために結婚相談所へ入会。お見合いで出会った女性と38歳で結婚しました。
子宝にも恵まれ、結婚した翌年に第1子が、その4年後には第2子が誕生。子どもたちは2人ともストレートで大学を卒業し、子育てに特に大きな問題はありませんでしたが、晩婚のためTさんの退職後も教育資金の支払いが続く状況でした。
Tさんが自宅を購入したのは、第2子が産まれた翌年、Tさんが44歳のときです。家族が増えたことに加えて、奥様からの「マイホームが欲しい」という強い意向があり購入を決断しました。
住宅ローンについては、定年後に収入が減ったあとも払い続けることが気になったため、退職金を使って繰り上げ返済することですでに完済しています。
年収は50代前半から1,000万円を超えており、退職時は1,400万円ほど。退職金も3,200万円ありました。すでに子どもたちも独立済みで、住宅ローンも完済。Tさんは肩の荷がおり、「これで悠々自適な老後生活が送れる」と信じて疑わなかったそうです。
では、なぜTさんは筆者のところに相談にいらしたのでしょうか。