「賃貸」か「持ち家」か……ライフステージが上がってくると、必ず持ち上がるこの疑問。なかには、「賃貸で高い家賃を払い続けるより、ローンを組んで中古マンションを買ったほうがお得!」と謳うウェブサイトもあります。しかし、安易にマンションを購入すると、思わぬ「破産危機」に見舞われてしまうことも……。FP Officeの須藤雅FPがAさんの事例をもとに「マイホーム購入時の注意点」について解説します。
「家賃より安いから」→まさかの事態で破産危機…世帯年収950万円の30代夫婦が戦慄した「住宅ローン返済額」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸から持ち家にしたのに…A家に迫る「家計破綻」の危機

年間収支を確認する

住宅費がわかったところで、次は年間収支を試算してみましょう。年間収支は、世帯年収から可処分所得を導き出すことで計算することができます。

 

世帯収入950万円に対し、可処分所得は約700万円。可処分所得に対する住宅費の負担率は26%です。

 

Aさんは家計簿アプリをつけており、そこから住宅費を抜くと月々の支出は約35万円であることがわかりました(ここには、保険の積み立てや確定拠出年金の金額も含まれています)。

 

したがって、年間収支は下記のようになります。

 

■月々の生活費
……約35万円

■年間にかかる生活費
……約35万円×12ヵ月=約420万円

■年間支出
……生活費:約420万円+住宅費:187万円=607万円

 

<年間収支>
可処分所得:700万円-607万円=93万円

 

現金貯蓄は年間93万円ずつ溜まっていく計算です。

 

結婚してから1年後に妊娠が発覚したBさんは、翌年4月に無事出産。奥さんは1年間の育児休業を取得し、その後は復帰予定でした。

 

しかし、職場復帰すると時短で働くことが難しいことがわかり、育児をするなかで子どもとの時間を大切にしたいとの思いが強まったBさんは、育休明けに退職を決意。新たに、Aさんの扶養の範囲内で働くそうです。

 

育児休業中の収入

育休取得前のBさんの収入は350万円でしたが、育児休業中の収入は約240万円。2年目以降は退職するため、扶養の範囲内で年間100万円ほどの収入となります。

※ 2ヵ月分の給与を含む。なお、出生一時金などは出産にかかった費用と相殺。

 

育児休業給付金は税制面で優遇されるため、税金が免除されることを考慮した可処分所得を計算していくと下記のようになります。

 

1年目(子ども0歳):700万円-(生活費607万円)=50.6万円

2年目(子ども1歳):560万円-(生活費651万円)=(-91万円)
※ 奥さんの収入が100万円になるのと、認定保育園の保育料が年間44万円ほどかかるので収支が変わります。

 

2年目にマイナス収支となりました。

 

4年目にお子さんが3歳になると、幼児教育・保育の無償化制度(2019年度~)により保育料がかからなくなりますが、それでも収支はマイナスのままです。

 

収入が減少したA夫妻にとって、可処分所得の3分の1が住宅費にかかっているというのはたしかに大きな負担です。2人は、現在の貯蓄300万円を切り崩して生活するのにも限界を感じているようです。