取引先が破綻…回収不能になった「売掛金」「貸付金」を「節税」に活用できる「貸倒損失」とは【税理士が解説】

取引先が破綻…回収不能になった「売掛金」「貸付金」を「節税」に活用できる「貸倒損失」とは【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

年末が近づいてきて、個人事業主や12月決算の中小企業の経営者の方は「決算対策」をどうしようかと考えていることと思います。真っ先に思いつくのが、「物品の大量購入」や「接待交際費の支出」等ですが、実は帳簿上の処理だけで済む方法もあります。その一つに「貸倒損失の計上」があります。回収できなくなった「不良債権」がある場合にとれる方法です。税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

「形式上の貸倒れ」とは

「形式上の貸倒れ」は、対象となる債権が、継続的取引から発生した「売掛債権」に限られます。「事実上の貸倒れ」と似ていますが、条件はそれより形式的かつ明確です。

 

形式上の貸倒れが認められるのは、以下のどちらかの場合です。

 

(1)継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止し、1年以上経過したとき(その売掛債権について担保物のある場合は除く)

(2)売掛債権の総額が取立費用より少なく(費用倒れ)、支払を求めても弁済がない場合

 

これらの場合、売掛債権の額から「1円」(備忘価額)を控除した額を、貸倒損失として計上できます。1円残しておくのは、売掛金債権が一応存在しているという痕跡を示すためです。「法律上の貸倒れ」「事実上の貸倒れ」と異なり、回収できる可能性が完全にゼロになってはいないからだと考えられています。

 

継続的取引から発生した売掛債権については、その他の債権よりも処理の迅速性が求められるので、「事実上の貸倒れ」よりも形式的・明確的な基準で判断されるということです。

 

以上、3種類の「貸倒損失」について解説してきました。貸倒損失の計上は、帳簿上の処理だけで完了する節税方法です。また、不良債権を整理し、財務状況を改善するという意義もあります。したがって、回収不能な状態に陥っている不良債権がある場合には、おすすめできる方法であるといえます。判断が微妙な場合は、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士

税理士

 

 

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