不動産投資で中古物件を購入する際に知っておきたい「インスペクション」。平たく言えば、第三者による住宅の検査のことです。以前はなかったインスペクションの制度がなぜ導入され、義務化されたのか。また、活用にはどのようなメリット・デメリットがあるのか。本記事では、中古物件購入時のインスペクションについて詳しく解説します。
中古不動産投資における〈インスペクション〉…「義務だから」利用するわけではない理由【不動産投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

どのように調査するのか?

専門家が中古住宅の点検、調査を行うのがインスペクションであることを理解したうえで、次にインスペクションではどの部分を、どのように調査しているのかについても解説します。

 

インスペクションの調査対象

中古住宅は戸建て住宅とマンションなどの集合住宅に大きくわけられます。インスペクションでは住宅の形態によって調査する部分が若干異なりますが、おおむね以下の項目を点検し、その結果が報告されます。

 

構造耐力上、主要な部分(基礎、柱など)

雨水の侵入防止に関わる部分(屋根、軒裏など)

給排水管路

シロアリ検査

 

どの事例であっても必ず行われるのが、構造耐力上の主要部分と雨水侵入防止部分の2つです。3つめと4つめはオプション扱いとなり、希望に応じて実施されます。上の2つは住宅としての基本的な性能が維持されているか否かに関わるため、インスペクションによって点検をする必要性は高いといえます。

 

インスペクションの調査方法

基本的にインスペクションは、住宅のプロである建築士やインスペクターと呼ばれる専門家が目視によって行います。単に見るだけの目視だけでなく、必要に応じて動作確認や数値の計測なども行われます。

インスペクションのメリット・デメリット

インスペクションは中古住宅の適正な流通のために設けられた制度です。実際にインスペクションを利用すると、売主および買主にはどんなメリットがあるのでしょうか。

 

インスペクションのメリット

インスペクションによって売主と買主の双方が得られる最大のメリットは、トラブルの未然防止です。住宅を引き渡したあとで問題が発生すると、その問題が不可抗力だったのか、もしくは故意に隠されたものなのかどうかを検証する必要があり、トラブルに発展しがちです。インスペクションを実施すれば専門家によって現状を正確に把握できるため、引き渡し後に予期せぬ問題が起きる可能性は低くなります

 

仮に問題が発生したとしてもインスペクションを実施した中古住宅は瑕疵保険に加入できるため、売主、買主のどちらもその責任を負うリスクがなくなります。買主にとってはこのことが安心感につながって中古住宅を購入しやすくなりますし、逆に売主にとっては高値かつスムーズに売却できる余地が広がります。

 

インスペクションのデメリット

非情にメリットの多いインスペクションですが、もちろんデメリットもあります。最大のデメリットは、プロに現地調査や診断、報告書の作成といった業務を依頼するため、費用が発生することです。それだけ費用を負担したとしても完璧に問題を発見できるわけではなく、インスペクションをしたから100%問題がないことが保証されているわけではありません。この「100%ではない」点に不満を感じる可能性については、事前に理解しておく必要があります。

 

また、インスペクションは売主が長く使用してきた住宅の状態を細かくチェックする作業なので、売主にとっては「あら捜し」をされているような感覚になり、心情的に抵抗を感じることもあるようです。