不動産投資で中古物件を購入する際に知っておきたい「インスペクション」。平たく言えば、第三者による住宅の検査のことです。以前はなかったインスペクションの制度がなぜ導入され、義務化されたのか。また、活用にはどのようなメリット・デメリットがあるのか。本記事では、中古物件購入時のインスペクションについて詳しく解説します。
中古不動産投資における〈インスペクション〉…「義務だから」利用するわけではない理由【不動産投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

インスペクションとは?

インスペクションとは、住宅診断士が第三者の立場で既存住宅の外回りや室内、床下、天井裏、設備などを点検することです。ひび割れや腐食はないか、虫食いや雨漏りはないか、ドアやシャッターは正常に動作するかなど、目視や触診、計測などで細かくチェックし結果を報告するというものです。

 

その種類には、不具合の有無だけを調べる1次的インスペクション、不具合の原因を解明する2次的インスペクション、リフォーム前に徹底検査する性能向上インスペクションの3つがあり、このうち説明義務が課されるのは、1次的インスペクションです。

 

日本では住まいに対する意識として、長年「持ち家志向」が強く、それゆえに新築が選ばれやすい傾向にありました。中古住宅市場は欧米よりも圧倒的に小さく、こうした状況が、全国で増加する「空き家問題」の深刻化を助長したと考えられています。

 

消費者が安心して中古住宅を売買するためには、中古住宅の品質や性能への客観的評価が明示され、取引価格や金融機関の担保評価に適切に反映されることが欠かせません。インスペクションはこうした背景から生まれたといってもよいでしょう。

 

[図表]インスペクションとは

 

不動産会社にインスペクションの説明が義務化された背景

先ほど述べたように、日本は欧米諸国と比べると中古住宅の市場がとても小さく、流通している住宅のうち2割程度しかありません。逆に米国や英国では流通している住宅のうち8割以上が中古住宅なので、日本とは真逆の状況です。日本の新築志向が全国の大量の空き家を生み出しているとの指摘もあります

 

資源の有効利用や環境保護の観点で考えると、新築ばかりに目が向いてしまってまだまだ使える中古住宅が放置されている状況は好ましくありません。そこで国は空き家対策の一環として中古住宅の流通促進を掲げ、安心して中古住宅を購入できる環境を整備する方策としてインスペクションの法整備を行いました。