国家公務員の定年年齢は2023年から段階的に引き上げられ、65歳定年となります。それに伴い、給与はどのように変わるのでしょうか。みていきましょう。
59歳では月給51万円だったが…「エリート国家公務員」60歳で手にする唖然の給与額「もう、やっていられません」 (※写真はイメージです/PIXTA)

初めて経験する「大幅な給与減」にエリートは…

もともと公務員には「再任用制度」があり、定年退職前の職員と同様の本来的な職務に従事できる制度がありました。今回の定年延長により2023年4月に廃止。65歳延長完了になるまでは、定年退職した職員を再任用職員(フルタイム、または短時間勤務)として採用することができる「暫定再任用制度」が設けられます。

 

制度の変更により、気になるのは給与はどうなるのか。人事院の資料では、60歳を境に、非管理監督職であれば41万円→28万円に、役職があれば51万円→役職定年で41万円→さらに35万円に。定年前後で給与は7割程度になるとしています。

 

また退職金は65歳定年前に退職した職員が不利にならないよう、60~65歳で退職した人は、当分の間は退職事由を「定年退職」として算定するとしています。

 

【60歳に達した職員の給与】

〈非管理監督職の例〉

◆60歳に達する前

月給与:41万0,200円※行政職(一)6級85号俸(本府省課長補佐級)

◆60歳に達した日後の最初の4月1日

月給与:28万7,100円※行政職(一)6級85号俸

 

〈役職定年の場合〉

◆60歳に達する前

月給与:51万0,100円※行政職(一)9級22号俸(本府省課長級)

◆60歳の誕生日(役職定年による降任に伴う降格)

月給与:410,200円※行政職(一)6級85号俸(本府省課長補佐級)

◆60歳に達した日後の最初の4月1日

月給与:35万7,100円※行政職(一)6級85号俸

 

<60歳に達した職員の諸手当>

7割水準となる手当:地域手当、期末・勤勉手当等

7割水準とならない手当:住居手当、扶養手当、通勤手当等

 

出所:人事院『国家公務員の60歳以降の働き方について (概要)』より

 

60歳で定年→仕事を引退となると、65歳の年金支給までの5年間、無収入になる問題があります。国家公務員がどんなにエリートだろうと「収入ゼロ」という期間があるのは不安でしょう。60歳以降もより安心して働ける環境整備は、エリート国家公務員であっても大歓迎なはずです。

 

問題は「給与減」を乗り越えることができるのか。会社員でも、多くの人は年を重ねるごとに給与アップを経験し、役職定年が定年前にない限り、ずっと給与は上がり続けるという経験をしているでしょう。公務員であれば、その傾向はより顕著です。つまり60歳での「大幅な給与減」は初体験。それでも仕事へのモチベーションを維持できるかといえば、なかなか難しい問題かもしれません。

 

――給与、こんなに減るんだ……もう、これではやっていられない

 

株式会社パーソル総合研究所が行った『シニアの就業実態・意識調査』によると、60歳以降の転職理由として多いのが「給料に不満がある」で全体の18.3%。約5人に1人は給与に納得がいかず、60歳を超えてから転職を経験しています。

 

国家公務員の定年を引き上げる理由は、年金待期期間の無収入状態を是正することのほか、人手不足への対応もひとつ。65歳に定年を引き上げたものの、給与の大幅減で退職者続々となっては意味がありません。エリートたちのモチベーションをいかに維持するか……大きな課題です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

厚生労働省『令和4年高年齢者雇用状況等報告』

人事院『国家公務員の60歳以降の働き方について (概要)』

株式会社パーソル総合研究所『シニアの就業実態・意識調査』