愛する妻のため「早期退職」を決断!介護生活を開始したAさんだったが…
Aさんはこれまで仕事一筋で、家庭をかえりみずにいました。しかし、妻が認知症になり「自分になにかできることはないか」と考え、積極的に有給を消化しながら妻の介護をはじめました。
またAさんが仕事のときには、同じ敷地に住む次男家族に協力を依頼していたそうです。
そのような生活が続くなかで、妻の症状が徐々に悪化していきました。孫の名前が言えなかったり、次男の奥さんを「あんただれ?」など忘れたり、トイレの場所がわからずに失禁したりすることが多くなってきたのです。
そのため、次男家族から「俺らも俺らの生活があるから、全部は面倒みきれない」と言われ、Aさんは悩みに悩んだ結果、愛する妻のため現在の仕事を退職することを決断しました。
愛する妻の介護はあまくはなかった
Aさんは仕事を退職してからというもの、これまで妻に任せきりだった炊事や家事を主体的に行いました。ただ、これまで家のことをすべて妻に任せており、どこになにがあるかがわからないためひと苦労です。
また、妻が夜中に突然起きて買い物に行こうとしたり、突然失禁したりすることが増えてきて、介護の負担が24時間体制となりました。
愛する妻のため、一緒に過ごすことが一番だと思い込んでいたAさんは、自力で介護を頑張ってきました。しかし、介護を続けるなかで身体的にも精神的にも、そしてなにより金銭的に追い込まれていきました。
Aさんは現役時代、大手企業の部長職として月70万円ほどの手取りがありました。仕事柄外食も多くグルメなAさんは、家の料理でも食材にこだわりを持ち、値段を気にしたことはありませんでした。また身に付けるものも高価なものが多かったそうです。
そのような生活が染みついていたAさん。退職後しばらくは質素な生活を送ることができませんでした。買い物をするにも、値段を見ずに食べたいものを買い、認知症でも身なりはきちんとしておくべきだという考えから、妻の意識がしっかりしているときには、デパートで衣服を買うことも多かったといいます。
退職金も含めてまとまった資産があるという、安心感と、妻の介護によるストレスから、現役時代さながらの金銭感覚で生活していました。その結果、退職時には4,500万円ほどあった預金が、60歳になるころには、2,500万円を切っていたのです。
妻の症状はよくなることはなく、介護の負担も増えていたAさん。この5年で一気に老け込んでしまいました。両親の変化を心配した子ども達からの必死の説得により、介護をはじめて5年後、Aさんはようやく施設を検討することに。妻を施設に入れた場合に無理のない資金繰りができるようにと、長男の知り合いであった筆者のもとを訪れました。