(※画像はイメージです/PIXTA)

「おひとりさま」が介護状態となってしまった場合、深刻なのは「お金」の問題です。頼れる人がいない以上、必要なお金は自分で準備しなければなりません。公的保障制度でいくらまで賄えるのか知ったうえで、自己負担しなければならない金額がどれくらいか確認し、足りないお金をできるだけ効率よく準備する必要があります。ファイナンシャルプランナーの伊藤貴徳氏が解説します。

◆【ケース1】要介護4で訪問介護・デイサービスを利用する場合

まず、「要介護4」と認定され、訪問介護とデイサービスを週5日ずつ利用するケースです。

 

厚生労働省の「介護報酬の算定構造」によると、1週間あたりの訪問介護の料金は約3万円、デイサービスは約6万円となります。1ヵ月では訪問介護が約12万円、デイサービスが約24万円で、合計約36万円となります。

 

この約36万円のうち、利用限度額の30万9,380円までは自己負担が1割(3万938円)で済みますが、超過分の5万620円については10割負担となるため、自己負担の合計は8万1,558円になります。

 

◆【ケース2】要介護5で介護施設に入所する場合

次に、「要介護5」と認定され、介護施設に入所するケースです。

 

この場合、自己負担額は施設の形態、介護を受ける方の所得等により異なりますが、一般的に費用の1割のほかに、居住費、食費、日常生活費の負担が必要になります。

 

厚生労働省の「サービスにかかる利用料」によると、要介護5の方の特別養護老人ホーム(有料老人ホームを含む)の月額利用料(個室)は、食事・居住費等を含めると、約14万円となっています。

 

一年間で考えると、年間約170万円の費用が発生します。この費用を、年金収入や、貯蓄を取り崩すことにより賄うことになります。

介護費用を抑える「高額介護サービス費」制度

高額介護サービス費制度とは、1ヵ月に支払った利用者負担の合計が「限度額」を超えたときは超過額が払い戻される制度です。この限度額は、その方の所得によって異なります。

 

限度額の詳細は、厚生労働省HPで確認できます。たとえば、市町村民税非課税の方の場合、利用者負担の限度額は24,600円になります。

 

ただし、介護保険制度の「支給限度額」を超過した分には適用となりません。

 

たとえば、市町村民税非課税の方が先述の訪問介護・デイサービスを受けたケース(費用合計約36万円)において高額介護サービス制度を利用すると、利用限度額(要介護4)30万9,380円の自己負担分(1割・3万938円)と利用者負担の限度額2万4,600円との差額6,338円が還付される一方、超過分5万620円は全額自己負担となるので、7万5,220円の負担ということになります。

 

利用しない場合(8万1,558円)と比べ、負担が6,338円軽くなります。

「おひとりさま」の年金で介護費用はどのくらい補える?

では、「おひとりさま」の場合、老後の年金で、介護費用をどの程度カバーできるのでしょうか。

 

厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で試算すると、21歳から60歳まで働き、その間の平均の年収が400万円の場合、65歳から受け取ることのできる年金額は年間160万円、月額にすると約13万円です。

 

前述のケース1(要介護4、訪問介護とデイサービスで月額合計約36万円、自己負担額8万1,558円)の場合、年金月額13万円から介護費用の自己負担額を差し引くと、4万8,442円しか残りません。

 

在宅介護の場合、普段の生活費も必要となるので、年金だけで賄えない場合にはその分のお金を準備する必要があります。

 

また、ケース2(要介護5、介護施設に入所して月額約14万円)では、毎月1万円の不足が発生し、これまでの貯蓄から取り崩す必要があります。

 

仮に65歳の方が85歳まで20年間施設に入所したとすると、65歳になるまでに最低でも240万円の準備が必要となります。

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。