平均的な収入のサラリーマン世帯が老後に受け取る年金は、共働き世帯なら約28万円、夫・会社員+妻・専業主婦の世帯なら約23万円というのが平均。それに対し、趣味やレジャー関連の支出も加味した「豊かなセカンドライフ」を過ごすために必要な金額は月38万円ほどだといいます。年金だけで「豊かなセカンドライフ」を実現するには、一体どのようなハードルを越える必要があるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
“ゆとりある老後”には「月38万円」必要だが…“普通の”サラリーマン世帯が「旅行やレジャー」にも妥協しない老後を送るための〈正攻法〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

「月38万円」…ゆとりある老後を年金だけで賄うには?

それでは、年金だけでゆとりある老後を実現することなど、不可能なのでしょうか。

 

保険加入期間が40年(480ヵ月)、国民年金の老齢基礎年金を満額受給できるとすると年間79万5,000円を受け取れます。サラリーマンとして勤めてきた人はこれに「老齢厚生年金」をプラスで受け取れますが、この老齢厚生年金を構成する「報酬比例部分」の計算に、サラリーマン時代の給与が影響してきます。

 

「報酬比例部分」は、2003年3月以前は①「平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月以前の加入月数」、2003年4月以降は②「平均標準報酬額(標準報酬月額+標準賞与額)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」と期間ごとに計算式が異なりますが、単純にいえば「長期間、高い給与で働く」ほど、受け取れる年金額も増えるということ。

 

現在の高齢者夫婦に多い「夫・会社員+妻・専業主婦」というケースを考えると、夫婦ともに満額の国民年金を手にできたとして「ゆとりある老後」を過ごすために必要な38万円/月とのギャップは約25万円となります。

 

上記、報酬比例部分の計算式から、大学卒業~定年の38年間(456ヵ月)勤めた会社員が厚生年金部分で25万円/月受け取るための平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)を算出すると、約120万円となります。ただ、標準報酬月額は最高65万円で計算されるため、これを上回る給与を得ていたとしても65歳で受給開始となる厚生年金は月21万円ほどが上限となります。

 

豊かな老後を実現するために必要な厚生年金25万円を得るには、「繰り下げ受給」や「加給年金等の特別支給分」を組み合わせる必要がありそうです。

 

ただ、最近では多数派を占めるようになった共働き夫婦なら、話は変わります。先ほどの計算式で考えると、現役時代に夫婦ともに平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)60万5,000円以上であれば、国民年金(満額)+厚生年金12万6,000円/人で、1人当たり月19万円ほど、「夫婦で月38万円」の年金を得ることも不可能ではなさそうです。

 

とはいえ、厚生労働省の『令和4年賃金構造基本統計調査』で大卒会社員の給与事情をみてみると、男性(平均43.4歳)は平均月収39万2,100円・推定年収640万2,700円、女性(平均36.6歳)は平均月収29万4,000円・推定年収462万4,600円。月収の中央値では、男性33万9,200円、女性26万1,700円です。

 

【男性・大卒会社員の年収の推移】

20~24歳:3,468,100 円
25~29歳:4,565,100 円
30~34歳:5,381,200 円
35~39歳:6,307,300 円
40~44歳:6,855,000 円
45~49歳:7,460,300 円
50~54歳:8,240,500 円
55~59歳:8,348,900 円
60~64歳:5,750,900 円
【女性・大卒会社員の年収の推移】
20~24歳:3,330,200 円
25~29歳:4,102,700 円
30~34歳:4,445,300 円
35~39歳:4,882,900 円
40~44歳:5,183,900 円
45~49歳:5,519,900 円
50~54歳:5,780,400 円
55~59歳:5,896,100 円
60~64歳:4,690,200 円

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より算出

 

そんななか、60万円超の月収を得ている人は男性会社員の11.3%、女性会社員のわずか2.6%に限られています。それに、「月収60万円超」といっても一時的なことではなく、厚生年金保険料を納めている期間の平均でそのハードルを越えていなくてはならないため、夫婦で「月38万円」もの年金を受け取れる世帯は、ほんの一部の“勝ち組”に限られるというのが現実です。

 

平均的な世帯がゆとりある老後を過ごすには、年金だけでは10~15万円もの赤字が発生するため、この分は自助努力による資産形成によって補うほかありません。

 

また、2013年の「高年齢者雇用安定法」制定によって定年後も働ける環境は整備されつつある点にも注目です。厚生労働省『令和4年「高年齢者雇用状況等報告」』によれば、「70歳」までの就業確保措置を実施済みの企業の割合は4社に1社というところまで進んでいます(21年6月1日現在)から、「働けるうちは働く」ことに加え、年金受給開始年齢を遅らせることで年金額アップを図ることが、普通のサラリーマン世帯がゆとりある老後を実現するための正攻法といえそうです。