いつまで続くか分からない物価高。特に収入が限られている年金生活者への影響は大きいものがあります。なかには年金が生活保護費にも届かず生きていくのもやっとというケースも。厳しい状況に置かれている低年金高齢者の実情をみていきましょう。
寒くて死にそうだ…年金月5万円の60代男性「雪が降っても暖房代を節約」低年金高齢者の厳しすぎる現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

元会社員でも低年金…気づいたときには時すでに遅し

国民年金の満額支給は、令和5年度、79万5,000円。1ヵ月あたり6万6,250円です。また厚生年金受給者の平均受給額は月14万円。65歳以上男性に限ると月17万円、女性は11万円。それに対し、男性の年金受給額は月5万円程度だとか。会社員時代もあったといいますが「勤めていた会社がいい加減で、厚生年金に入ってなかった」と男性。昨今は、1年に1回「ねんきん定期便」が手元に届き、年金の加入状況をきちんと確認ができますが、男性が元職場のずさんな状況を知ったのは、年金を受給する段階になってからだといいます。

 

厚生年金は一定の条件を満たす事業所に対して加入義務が設けられ、厚生年金適用事業所では、国籍や性別、年金受給の有無にかかわらず、70歳未満で常時使用されているすべての従業員が被保険者の対象となります。適用事業所でありながら厚生年金に加入していない場合、6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金刑(厚生年金保険法102条)。また厚生年金に未加入だったことが判明したら、すぐに年金事務所や弁護士等の専門家に相談するのが鉄則です。

 

しかし現在、年金を受け取っている高齢者のなかには、男性のような目にあっている人が意外と多いといいます。これまでの裁判例では、被保険者本人が年金支給年齢に達している場合は、ほぼ損害賠償請求が認められています。ただ訴えるためには、いくらかかるでしょうか。結構な労力もかかるでしょう。結局、泣き寝入りしているケースが多いといいます。

 

月5万円の低年金。生活保護費以下の収入ではありますが、男性が貯蓄額を伝えたところ、支援は難しいといわれたといいます。

 

――暖房代を稼ぐために、一生働かないと……お先、真っ暗だよ

 

生活保護を受給するための絶対条件は、申込者の世帯収入が居住地の最低生活費よりも低いことです。たとえば「北海道札幌市」65~69歳の一人暮らしの場合、最低生活費は7万3,590円、最低家賃が3万6,000円、生活保護費は10万9,590円です。この金額を収入が下回る場合、その差額が支給されます。ただ、最低生活費の月額を上回る預貯金を保有している場合は、基本的に生活保護利用開始は認められていません。ほかにも、売却できる資産があれば売却を促され、働けるなら就労を促されます。ただ低収入というだけでは、生活保護は認められないのです。

 

朝晩には氷点下となり、真冬日も珍しくないという北国の冬。低年金の高齢者には厳しい日々が続きます。