老人ホームにはいくつかの種類がありますが、比較的費用が安い公的な施設は人気です。特に「特別養護老人ホーム」、いわゆる「特養」は1年以上の入居待ち、というのも珍しい話ではありません。そんな特養にやっと入所……しかし退去させられるケースもあるとか。みていきましょう。
年金月14万円・70代父「やっと特養に入所」も3ヵ月で〈まさかの退去勧告〉50代娘「遂にこの時が来たか…」とため息 (※写真はイメージです/PIXTA)

入居待ちが当たり前の「特別養護老人ホーム」…入居できても退去勧告もあり

昨今、加速するニーズに公的施設だけでは対応できず、その受け皿として民間施設が増えています。しかし、費用が安価な公的施設は常に人気。たとえば「②特別養護老人ホーム」、いわゆる特養。個室か、それとも多床室(相部屋)かで自己負担額は異なりますが、要介護5で多床室を利用した場合の月負担額の目安は約10万4,200円、ユニット型個室では約14万1,430円(厚生労働省ホームページより)。月々の年金受給額だけでも払えるという人も多いでしょう。

 

それゆえに「入居待ち」は当たり前。厚生労働省『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』によると、入所申込者(特養に申し込んでいるものの、調査時点で当該特養に入所していない人)は29.2万人(そのうち在宅は11.6万人)。まさに入居のために列をなしている状態です。

 

めでたく特養への入所が叶った……しかし、せっかく入所が決まったのに、退去要件に該当して退去させられるケースも珍しくはありません。

 

ーー70代の父、入所している特養から退去の話があった

 

50代女性の投稿。父親は要介護3、年金は月14万円程度で、費用・予算を考えて、自宅からも近い特養に入所を申請。それから1年、やっと順番が回ってきたといいます。しかし入所から3ヵ月、脳梗塞で父親は入院。4ヵ月が経ち、施設側から退去の話をされたといいます。

 

ーー遂にこの時が来てしまった……仕方がない、特養に戻れそうもないし

 

と諦めムード。特養は入居待ちが多いうえ、必要な医療サポートも提供できない可能性が高いため、ほとんどの施設で長期入院を退去要件に定めています。一般的に3ヵ月以上の入院で退去を求めることが多いようです。また特養は医師が常駐する義務はなく、日々の医療ケアは看護師が行います。しかし医師でないと対応できない医療行為が必要になると退去せざるを得なくなります。

 

一方で、症状の改善がみられた場合も退去という話が出るでしょう。特養の入居条件は要介護3以上。要介護2以下になると退去を求められる可能性があるのです。ただ特例入所の要件を満たせば、入居を継続できるケースもあるとか。

 

ほかにも、利用料の滞納や、暴力や暴言、職員へのセクハラなど入居者や職員への迷惑行為も退去勧告の対象になります。

 

このように、終身利用しやすい特養でも退去を求められることがあります。契約書には退去要件の記載があり、該当したら退去も仕方のないこと。しかしほとんどの施設で猶予期間があるので「突然追い出される」ということはないでしょう。また退去後の施設を探す場合は、原因になった問題に対応できる施設かどうかを判断基準にすることが重要です。