今後、日本のなかで成長していくといわれている業界のひとつが介護業界。そこで気になるのが、この業界で働く人たちの給与額です。肉体的にキツイというイメージが強い介護業界ですが、実際はどうなのでしょうか。みていきましょう。
会社員の平均給与「月32万円」だが…44歳・介護職員、絶望の給与額「人のために働いて、たったこれだけ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

肉体的にも精神的にもきつい介護業界…やりがいに頼るしかない給与額

肉体的にも精神的にもきつい介護職員。それに見合った給与がもらえていれば何の問題もないのですが、前出の調査の結果の通り、当人たちの悩み・不安・不満の第2位が「仕事内容のわりに賃金が低い」。人手不足なのも仕方がないといったところです。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、会社員(男女)の平均給与は月収で31.1万円、年収で496万円。一方、介護系の職業の平均給与を確認してみると、いずれも平均を大きく下回る給与額でした。

 

【介護系職業の平均給与】

◆介護職員(医療・福祉施設等)」(平均年齢44.2歳)

月収:24.2万円、年収:362.9万円

◆訪問介護従事者(平均年齢49.1歳)

月収:24.5万円、年収353.1万円

◆その他の社会福祉専門職業従事者(平均年齢53.4歳)

月収:26.8万円、年収395.5万円

◆介護支援専門員(ケアマネージャー)(平均年齢51.6歳)

月収:27.4万円、年収:405.7万円

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

 

肉体的にも精神的にもきつく、給与も平均以下の介護職員。それでも働く理由とはなんなのでしょうか。前出の『介護労働実態調査』で「現在の仕事を選んだ理由」を尋ねると、トップは「働きがいのある仕事だと思ったから」で50.5%。「資格・技能が活かせるから」37.6%、「人や社会の役に立ちたいから」31.7%、「今後もニーズが高まる仕事だから」31.4%という回答が続きます。

 

「人のため、社会のため」と、高い志をもった介護職員。一方で、給与は「やりがい搾取」と揶揄されることもある水準です。「こんなに人のために働いているのに、給与はたったこれだけ……」。そんな絶望感を抱いてか業界を去る人も。介護業界の離職率は15%程度で、比較的、離職率の高い業界に数えられています。

 

介護業界での慢性的な人手不足は、利用者に跳ね返ってきます。なかでもいわれているのが、介護難民。要介護で施設に入ることを希望しても、入所できる施設が見つからない……まさしく難民と化す問題です。施設は次々と増え続けているのに、職員が足りず、数を絞って運営を行うしかない。そのような施設は増加傾向にあり、今後、需要が飛躍的に伸びるとされている大都市圏では介護難民も増えていくといわれています。

 

そのような状況下、政府は介護業界の賃上げを積極的に行おうとしていますが、肉体的にも精神的にもきついという仕事内容に見合うだけの水準にまで上げられるかといえば……少々、期待薄、というのが現実。当分の間、いま活躍している介護業界の人たちのやりがいに頼るほか方法はなさそうです。