収入減が年金のみとなる人が多い老後、誰もが少なからぬ不安を抱いていることでしょう。しかし、日本の高齢者の「貯蓄事情」をみてみると、統計上はかなり余裕のある世帯が多いことがわかります。とはいえ、日本で破産に至る人の4割が60代以上だというデータもあり、まだまだ油断はできなさそうです。詳しくみていきましょう。
年金月22万円の65歳夫婦…“貯蓄2,500万円”あっても「老後破産とは無縁」と言い切れないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

平均的な日本の高齢者夫婦…1ヵ月の収入・支出と貯蓄額

「老後に向けて、どれくらいの貯蓄が必要だと思いますか?」

 

こう質問されると、なんとなく「2,000万円」という金額を挙げる人が多いようです。その背景の1つが、19年頃に話題になった「老後資金2,000万円不足問題」。高齢夫婦が普通の暮らしを送るためには、平均的な年金受給額では月5万円足りず、1年で60万円、30年で約2,000万円の赤字が発生するため、不足分は自助努力によって準備しなければならない、という問題です。

 

メディアや証券会社・銀行なども、ここぞとばかりに「2,000万円」という金額を持ち出し、運用による老後資産作りを広く呼び掛けたことから、この金額が多くの日本国民の脳裏に刻み込まれたのでしょう。実際、金融広報中央委員会『家計行動に関する世論調査(令和4年)』をみると、資産形成の目標額は全世代平均が2,976万円で、中央値は2,000万円。年代別の目標額(中央値)をみると、20代は600万円、30代は1,000万円、40代は1,500万円で、50~70代は2,000万円と回答しています。

 

ただ、「老後資金=2,000万円」の根拠となった総務省統計局『家計調査 家計収支編』の最新版をみてみると、夫婦ともに65歳・無職という世帯の一般的な生活ぶりなら、月々の赤字額は単純計算で2万2,000円ほど。30年間の不足額は800万円ほどになりそうです。

 

【65歳以上・無職の高齢者夫婦「1ヵ月の収入・支出」】

◆実収入:24万6,237円

・そのうち公的年金:22万418円

◆実支出26万8,508円

・そのうち消費支出:23万6,696円

(内訳)

食料:6万7,776円

住居:1万5,578円

光熱・水道:2万2,611円

家具・家事用品:1万371円

被服及び履物:5,003円

保健医療:1万5,681円

交通・通信:2万8,878円

教育:3円

教養娯楽:2万1,365円

その他の消費支出:4万9,430円

出所:総務省統計局「家計調査 家計収支編」(2022年)

 

また、同じ調査の『貯蓄・負債編』で、高齢夫婦の貯蓄額をみてみると平均2,500万円強。上の統計では30年間の不足額は800万円ほどでしたから、有り余るほどの貯蓄があり、「老後は安泰」というのが日本の高齢者の平均像といえそうです。

 

【65歳以上・無職の高齢者夫婦「貯蓄と負債」】

◆貯蓄:2,509万円

・そのうち金融機関:2,504万円

(内訳)

通貨性預貯金:728万円

定期性預貯金:928万円

生命保険など:400万円

有価証券:448万円

・そのうち金融機関外:4万円

◆負債:29万円

・そのうち住宅・土地のための負債:24万円

・そのうち住宅・土地以外の負債:2万円