自分の仕事が会社の成長にダイレクトに反映される…ただ、年収は100万円ダウン
ーー「最近、守りに入ってる気がする。刺激が足りない」
SNSにそう投稿したのは、40代後半の男性会社員・Tさん。抜群の知名度を誇る大手ハウスメーカーで、営業部・課長の任に就いているようです。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』で、従業員規模1,000人以上の大企業に勤務する大卒・男性サラリーマン(不動産業)の平均給与をみてみると、課長(平均年齢48.5歳)で月収60万1,000円、推定年収1,067万円。同年代の大卒男性会社員の平均年収は推定756万円ほどですから、Tさんは紛れもなく、“勝ち組”といえそうです。
翌週には、「挑戦することに決めた」と投稿したTさん。年収1,000万円を捨て、不動産テック系企業への転職を決めたといいます。
課長への昇格はだいたい48歳頃とされるなか、45歳にして同ポジションに就いたTさん。新卒入社後、最初の配属先は営業部でしたが、そこからマーケティング部や企画部など、一通りの部署を経験し、課長として営業部に凱旋したエリートです。
部下にも恵まれ、給与も安定している現在のポジションに目立った不満はありませんでしたが、50代を目前に「攻めの姿勢」を忘れている自分に物足りなさを感じ、ここ1年ほどは、チャレンジングな仕事を求め、転職サイトを眺め続けていたといいます。
そんななか、情報収集も兼ねてある不動産ベンチャー企業に「カジュアル面談」を申し込んだところ、あっという間に選考が進み、「部長級」でのオファーを受けるに至りました。
そのベンチャー企業は、現在の職場よりも従業員の平均年齢が10歳以上若いようです。自身の仕事が会社の業績にダイレクトに反映される実感がある環境に、Tさんの心は踊ったといいます。ただ、選考中に気がかりだったのは、転職後の年収が100万円近く減ってしまうこと。はじめ給与額を知らされたとき、Tさんの熱は一気に冷めてしまいました。
仮に、今回の転職先がベンチャーではなく、前職並みの大企業だったとしたら……。厚生労働省の統計で平均値をみると、従業員1,000人以上・大企業の部長の平均年収は約1,324万円。30%近い収入増もあり得ました。
しかし、今回もらったオファーは従業員数30名未満の企業の部長職。同じ統計で従業員10~99人企業をみると、部長級の平均年収は997万円ほど。同世代のサラリーマンの平均からすれば、まだまだ高給取りといえそうな水準ですが、それでもTさんが100万円弱の給与ダウンに直面することは事実です。
このように、前職での経験が活きる同業種かつ役職が上がったとしても、大企業から中小企業に移る場合は、大幅な給与減も珍しくありません。上の調査でみた通り、転職後の職場への不満の要因としてトップに立つ「賃金の低さ」を受け入れてでも、ワクワクする職場に飛び込みたいのであれば、入社後の給与の上昇余地がどれほど残されているのか、慎重に見極めておく必要がありそうです。