無断建築でも「黙認」していたと見なされると・・・
借地人との間で交わした賃貸借契約書を基に、土地が本来の用途のまま使われているか、土地の利用状況を確認することも大切です。ここで問題となるのは、建物があることによって借地人が「借地権がある」と言って、権利を主張してくることです。
「資材置き場として貸しているのに、そこに無断で建物を建てたということは、相手に非があるんじゃないか」と考える向きもあるでしょう。しかし、ここが重要なのですが、地主が長いことそれに気づかなかったということは「契約違反であるにもかかわらず、黙認していた」ということになるのです。
これは、法的な問題に発展したとき、大変不利に働きます。貸している土地に建物が立っているのに、これまで何もアクションを起こさなかったということは、黙認したことになってしまうのです。
おおむね地主さんたちは賃料(地代や家賃)さえ滞りなくきちんと毎月振り込まれていれば、それだけで安心してしまうようです。たまに見に行っていれば、こんなことにはならないのですが、なかなか貸地・貸家のチェックまでは手が回らないのでしょう。
土地に何か建ったら、即「取り壊し」を言い渡す
貸している土地はまめにチェックして、何か建ちそうになったら、即座に取り壊すよう借
地人に言い渡さなければなりません。それを怠って気づかないままでいると、本来であれば建物の分まで含めて取れるはずの賃料を取れないまま過ごすことになってしまいますし、地上権を主張されると相手の権利もからんでくるので、その土地を売りたいときに自由に売ることができません。
そうすると土地の評価にも影響してきます。建物の有無、人の居住の有無、事業に使われていることの有無など、現地を見て初めてわかることはたくさんあります。
現地調査でわかった問題の多くは、放置しておくと将来的に地主さんと借地人との間のトラブルに発展します。実際、現地調査で建物が立っていることがわかり、「無断で建てたんだから、建物を撤去して」という地主側の主張に対し、先方がいきなり弁護士の名前で「壊すんだったら営業補償金を出せ」と言ってきたこともありました。
すぐに売れそうな「優良資産」と思っていた土地が、気づかないうちにこのようなトラブルの種を抱え込んでいて「不良資産」になってしまうことがあるのです。
特に郊外のいろいろな場所にとびとびで土地を持っている地主さんに、このような問題が起こりやすいようです。まとまった場所に土地を持っている場合は、目が届きやすいのでこのようなことはまずありません。
調整区域の資材置き場は特に注意
調整区域で資材置き場として貸している土地がある場合は、こまめに現地を見に行くようにしたほうがいいでしょう。現地調査でこのようなトラブルが見つかった場合も、経験豊富な専門家ならただちに対策を立てて実行してくれます。
筆者自身も現地調査に赴いた際、借地権で貸しているはずの土地が無断で駐車場にされ、第三者に貸し出されているのを見つけたことがあります。第三者に貸して利益が上がっているということは事業用地ですから、一般的には地代は高くなります。
また、相続税の評価額について言えば、底地評価ではなく更地評価になり、高額になってしまいます。そして、何よりも貸主に対して一言の相談も報告もなかったこと自体、大きな問題です。本来であれば賃貸借契約を見直して地代も改定すべき事態なのに、借主はそれを怠っていたわけです。このケースでは、早速、調査の依頼主である地主さんに報告し、契約を締結し直して事なきを得ました。
このように土地の問題をよく理解している専門家に調査を依頼することで、早期の解決が可能になるということも念頭に置いておいてください。