日本の「生涯未婚率」は上昇を続けており、2030年には男性の未婚率が3割に達するとの見立てもあります。統計をみる限り単身者は「賃貸暮らし」を選ぶ傾向が強く、そのため対策を怠ると、いつか高齢者と呼ばれる年齢になったときに想定外の苦労を強いられることも。詳しくみていきましょう。
平均資産額1,300万円超だが…“人生の自由”を謳歌する「おひとり様」が老後に直面する〈悲劇的な事態〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

今後も増加が見込まれる単身高齢者…「終の棲家」をどうするか

次に、同調査の「借入金」に関する項目をみてみると、単身者で「借入金がある」人の割合は15.3%。二人以上世帯が20.4%であることを鑑みると、負債がない分やはり単身者のほうが自由に暮らしていそうな印象ですが、この差異の背景には「住まい」に対する考え方の違いがありそうです。

 

実際、二人以上世帯の持ち家率が68.1%(全年代の平均)であるのに対し、単身者は33.0%と半分ほど。下表をみると、とくに30~50代の現役世代で二人以上世帯との差が大きくなっています。年齢を重ねれば相続などで家を取得するケースも増え。持ち家率の差は縮まりますが、単身者に「賃貸派」が多い傾向があることは明らかです。

 

年代別「持ち家率」の推移
数値左:単身世帯、右:二人以上世帯

20代:4.9%/17.5%
30代:11.4%/47.2%
40代:18.2%/61.8%
50代:33.6%/71.9%
60代:54.9%/79.3%
70代:68.1%/80.8%

出所:金融広報中央委員会『令和4年 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査、二人以上世帯調査]』より

 

そんな賃貸派の単身者の住居形態についてみてみると、「民間の賃貸マンション・アパート、借家」の割合が全体の半数近い47.5%。20~40代では6割を超えています。しかし、50代で半数を割り、60代は28.0%、70代となると16.7%にまで減少します。

 

非持ち家派の単身世帯「民間の賃貸マンション・アパート、借家」の割合

20代:67.9%
30代:69.1%
40代:63.0%
50代:49.5%
60代:28.0%
70代:16.7%

出所:金融広報中央委員会『令和4年 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』より算出

 

高齢化の進行に伴って種々の制度が見直される可能性はありますが、少なくとも現状においては、年齢を重ねれば重ねるほど、賃貸契約の審査が厳しくなるというのが現実です。

 

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会『日管協短観』によると、不動産オーナーのおよそ4人に1人が「居室内での死亡事故等に対する不安」「賃料の支払いに対する不安」から、高齢者に対する拒否感を抱いているといいます。

 

とくに単身者の場合、「孤独死」のリスクがあるため、オーナーが敬遠しがちだというのも頷けます。

 

最近では、「年金」という安定収入があることから「高齢者歓迎」を打ち出すオーナーもみられますし、家主が高齢入居者を拒まないようにする行政支援も徐々に広がりつつありますが、そうしたケースはまだまだ少数派。ほとんどの単身高齢者は賃貸契約の場面で困難に直面することになるでしょう。

 

2040年代中ごろには年金額が2割ほど目減りするとの観測もあり、その分、家賃滞納・強制退去のリスクも高まります。部屋を追い出された後に家賃の安い部屋に探そうにも、すぐには審査をパスできず、住むところを失う……そんな悲劇的な事態に陥るリスクも十分に考えられます。

 

結婚への考え方が多様化している昨今。冒頭にみた通り、今後「生涯未婚」を決意する人は増え、それに伴って単身高齢者も増加するとみられています。単身高齢者にとって最大のネックになるのは「住まい」の問題。老後に向けた資産形成を進めるにあたっては、「終の棲家をどうするか」についても、早くから目を向けておく必要がありそうです。