平均寿命が延びるなか、悩みのタネのひとつとなるのが「老後の住まい」。その際、有力な選択肢に挙げられるのが「老人ホーム」への入居でしょう。用意周到に準備し、「自身にぴったりのホームに入居できた!」と思っていても、油断は禁物です。本記事では、70代のAさん夫婦の事例とともに老人ホーム費用の現状について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
「もうムリ」終の棲家の老人ホームから突然の“値上げ宣告”…〈年金月30万円・70代夫婦〉が憤慨した、衝撃の請求額【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

インフレに弱い高齢者世帯

2023年度の公的年金の支給額は3年ぶりに物価上昇の影響で増額となっています。67歳以下の人は2.2%、68歳以上の人は1.9%増えています。しかし、これだけの上昇率では物価の上昇には追いつかず、実質的な価値は目減りすることになります。

 

我が国の公的年金制度は、現役世代が納めた保険料がその時の受給者の給付に充てられる賦課方式が採用されています。

 

給付額は、賃金や物価の変動などを基準として改定することが法律で定められていますが、保険料を負担する現役世代の人口の減少や年金給付を受ける高齢者の平均余命の伸びによる年金財政の悪化を避けるために、2004年に給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」が導入されました。

 

「マクロ経済スライド」とは、将来の現役世代の負担が過重なものとならないように、保険料等の収入と年金給付等の支出の均衡が保たれるよう、年金の給付水準を調整することです。つまり、将来の年金水準を確保するために給付を抑制することになるため、年金額の上昇は物価の上昇には追いつかないため、実質的には目減りすることになります。

 

※図は日本年金機構HPより引用
[図表4]マクロ経済スライド ※図は日本年金機構HPより引用

 

人口減少や高齢者社会は、日本の経済の規模を縮小させますから、円安を進めたり、人件費の高騰につながったりして、結果として物価を上昇させます。今後も人口減少は加速していきますので、値上げは続くと思われ、実質的に目減りしていく年金だけでは生活できない高齢者は増えていきます。

人気の「シニア分譲マンション」は修繕積立金にも注意!

老人ホームとは別に、高齢者向けの住宅として富裕層に人気の「シニア向け分譲マンション」という物件があります。シニア分譲マンションとは、高齢者が生活しやすいようにバリアフリー化など配慮された分譲マンションで、老人ホームと違い、物件の所有権を持つことになります。

 

富裕層がターゲットのため、細かい生活支援サービスを受けられることができ、ジムやレストラン、シアタールーム、温泉などがある施設もあります。

 

老人ホームと異なるのは、分譲マンションの購入になりますので、サービス費や管理費などの月額の他に修繕積立金も必要になることです。マンションの修繕積立金は、近年、材料費や人件費の高騰で不足が問題となっています。ですから、この修繕積立金も値上げされることは十分に考えられます。

 

数千万円でマンションを買い、さらに毎月10万円~20万円の出費があるシニア分譲マンションは、ターゲットが高齢者に限られていることもあり、いざ、売ろうと思ってもなかなか売れない、貸そうにも月額負担が大きくなり借り手がない、というケースも少なくないようです。

 

一口に「老人ホーム」といってもいろいろな種類があり、施設によってサービス内容も変わってきます。老後には大きなお金がかかりますから、現役時代から終の棲家について考えておく必要があります。

 

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表