手元には“最低1年分”の生活資金を確保しておきたいところ
オーバーローンなら、自己資金に一切手を付けることなくマイホームを購入できる可能性があり、また買い時を逃すことがありません。「頭金を2~3割」が常識といわれているものの、万一に備えて手元に現金を残して置けることは大きなメリットですので、「自己資金ゼロ」というのも立派な選択肢です。
ただ、当然のことながら頭金を入れない分、月々の返済額は増え、それに伴って破綻のリスクも高まります。
実際、どれほど月々の返済は変わるのか、前出の平均値に基づいて考えてみます。購入する物件は、5,000万円。①頭金を入れるパターンでは、借入金額は3,600万円②「オーバーローン」を利用する場合で借入金額は5,000万円+諸経費の50万円です。返済方式は元利均等、金利は0.5%・返済期間はともに30年とします。
①頭金を入れる場合、利息分は277万4,775円で月々の返済額は10万7,708円。一方、オーバーローンの場合、利息分は389万2,482円、月々の返済額は15万1,090円となり、月々の返済額は4万3,000円以上増額します。仮に、利用者の年収が平均的な水準だとすると、①の返済負担率は22%であるのに対し、②だと31%。余裕をもって返済できる目安は返済負担率にして20〜25%とされていますから、かなりの負担感を苛まれることになります。
オーバーローンでマイホームは実現できたものの、毎月の返済で一杯いっぱいの状態だといえるでしょう。ローン返済と同時並行で貯蓄を行うことは困難であり、万が一、病気やケガ、勤め先の業績悪化など収入が激減するような事態に見舞われれば、家計はいとも簡単に破綻に至ります。
このほかオーバーローンには、借入残高が大きい分だけ金利上昇の影響を受けやすく、そもそも利用できる金融機関の選択肢が少ないというデメリットがあります。「現金を手元に残しておきたい」といった理由で利用を検討する場合、上にみた通り返済負担率を20~25%程度に抑えられるような収入がある場合に限られると認識しておくべきでしょう。
そう考えるとやはり、ある程度の自己資金を用意することは、マイホーム購入の必須条件なのかもしれません。ただし、あまりに多くの頭金の入れて手元資金がなくなってしまうのは考えもの。“超低金利”は続いていますので、有利な条件で賢くローンを利用し、万が一の事態に備え、最低でも1年分の生活費に相当する現金を手元に残しておく必要がありそうです。