5人に1人が「金融機関の勧め」で“運用デビュー”
同調査では、「初めて投資をしたきっかけ」として、19.7%の人が「金融機関に勧められた」という理由を挙げています。たしかに、長年給与の受け取り口座として利用してきた銀行から「退職金を受け取られた方だけにご紹介できる商品があります」などと案内されれば、「時間もあるし、話だけでも聞いてみるか」となるかもしれません。
銀行が、「退職金受給者限定」と謳って勧誘を行うとき、前面に押し出されるのは年率にして3~6%という好条件の定期預金。仮に年利6%の定期預金に500万円を預け入れたとしたら、1年間で受け取れる利息は税引前で30万円に上りますから、この超低金利下では魅力的に映るかもしれません。
ただし、この高い金利を受け取るためには、多くの場合、定期預金と同額がそれ以上の金額の投資信託や外貨定期預金などの商品をセットで購入することが条件になっている点に注意が必要です。たとえば定期預金に500万円を預けるのであれば、投資信託または外貨定期預金も500万円(以上)を購入するということです。
それに、上に例として挙げた「6%」の金利はあくまでも「年率」。多くの場合、こうした商品で金利の優遇を受けられる期間は「3ヵ月」などに限定されており、その場合、受け取れる利息は年率の4分の1、わずか7万5,000円となります。それでも普通預金よりははるかに高い利息を受け取れる訳ですが、実際には、セットで購入する商品の購入や運用にかかるコストでマイナスに転じてしまうケースもあるようです。
実際に大手行が販売している投資信託のなかには、購入時手数料が3.5%を超える商品も。仮に定期預金と同額の500万円分の投資信託を購入した場合、17万5,000円もの手数料を負担することになり、定期預金で受け取れる7万5,000円の利息は吹き飛んでしまいます。
また、投資信託の価格は日々変動するため、市況によっては元本割れに陥るリスクもあることを忘れてはなりません。セットで購入する商品として外貨定期預金を選択した場合は、円貨・外貨を交換する際に為替手数料が発生する上、為替変動によるリスクを被ることを認識しておく必要があります。
退職金を受け取ったタイミングで慣れ親しんだ銀行の窓口担当者から運用の案内を受けた場合、「話を聞いてみよう」と思ったのであれば、想定されるリスクや期待できるリターンについて納得いくまで質問しましょう。「銀行が勧める商品=安全」という思い込みから商品性をよく理解しないままに資金を投じれば、「預貯金のまま置いておけばよかった…」と後悔することになってしまうかもしれません。