少子高齢化が進むなか、昨今では高級志向の老人ホームやシニア向け分譲マンションといった選択肢が増え、老後の住まいが多様化しています。終の棲家に選ぶ人も多いなか、一方で入居後に後悔したというケースも……。本記事ではFP1級の川淵ゆかり氏が、Aさんの事例とともに、高級老人ホームとシニア向け分譲マンションの違いから、失敗しない老後の住まいの選び方について解説します。
資産5億円の69歳独居婦人〈高級シニアマンション〉へ優雅に人生最後の引っ越しも…3ヵ月後に「絶体絶命ピンチ」のワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

シニア向け分譲マンションを購入も、予想外の事態に…

さて、Aさんは息子たちもいるため、将来は相続財産にもなるシニア向け分譲マンションを購入しました。購入したマンションには、レストランや大浴場に娯楽施設もあり、間取りもゆとりがあるために息子たちが遊びに来たときも泊まってもらうこともできます。快適な余生を送れる、そう信じてAさんは意気揚々と引っ越しました。

 

入居してみると、スタッフも評判どおり優しく、サービスもきめ細かく、Aさんは優雅なマンション生活をスタートした……はずでした。

 

もともと静かな高級住宅街のお屋敷に住んでいたAさんです。マンション暮らしも初めてなことから、壁一枚向こうに他人が住んでいることを考えると、どうも落ち着きません。

 

そんななか、同じマンションの居住者が夜間に自分の部屋と間違えたのか、Aさんの部屋に入ろうとしたことがあり、神経質なAさんはその晩からなかなか寝付けなくなります。

 

さらに、このマンションは1匹まではペットを飼うことが認められていたため、隣人が小型犬を室内で飼いだしたのです。キャンキャンといった犬の鳴き声がいつまでも耳に残ってしまい、入居して3ヵ月も経たないうちにAさんの神経は参ってしまいました。

 

「こんな状況、私のいままでの人生になかった。絶体絶命よ!もう耐えられない!」Aさんは2人の息子に訴えます。賃貸マンションであれば転居もできたのですが、分譲マンションですからそう簡単にはいきません。「そんな大げさな。母さんは贅沢だ、少しは我慢しなさい」と諭されてしまいます。Aさんは急に孤独感にさいなまれ、優しいスタッフさんの前で子どものように泣いてしまいました。

 

高級老人ホームもシニア分譲マンションもそれぞれメリットもデメリットもあり、簡単にはどちらがいいかは決められません。また、それぞれの施設ごとにサービスや特徴も違ってきます。事前にしっかりと説明を受けることは大事ですが、どんなに説明を受けても入居した後に「思ってたのと違う」ということは出てくるでしょう。

 

Aさんのように一戸建てにしか住んだことのない人は、購入前に普通の賃貸マンションにしばらく住んでみたほうがよかったかもしれませんね。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表