必死に働いても、老後生活を支えるに十分とはいえない年金額。定年後、夫の年金を頼りに暮らしていた専業主婦の女性は、夫の急逝で生活が一変。受給できる年金額が大きく目減りすることを知り、困り果ててしまいました。FP Office株式会社の久保雅巳FPは、Bさんにどのような助言を行ったのでしょうか。みていきます。
年金“月23万円”の60代夫婦、67歳夫の急逝で年金受給額が激減…66歳の妻「もう、ムリ」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

貯金を切り崩す暮らしでBさんは「老後破産危機」に

総務省の家計調査年報によると、高齢単身無職世帯(65歳以上)の1ヵ月当たりの消費支出(生活費)は平均13万3,146円となっています。しかし、生活費とは別に、税金や社会保険料などの非消費支出(月平均1万1,541円)がかかるため、実質的には生活費約14万円+非消費支出約1万2,000円=約15万2,000円が必要ということになります。

※ <参考>総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)家計の概要」

 

ただし、上記の数値はあくまでも目安です。家庭ごとに状況が異なるため、収入・支出の違いをしっかりと把握することが必要です。さらに、上記の平均支出は持家の有無が平均化されているため、賃貸に住んでいる場合、上記以上の支出が必要になるケースが多いです。

 

また、多くの人にとって、長く維持してきた生活水準を急に下げるのことは想像以上に簡単ではありません。

 

相談にきたBさんも、「夫と暮らしているときは年金を使い切り、貯金を切り崩す生活をしていました。でも、遺族年金の金額を見て驚いてしまって……もう、ムリです。このままでは生活できません」と弱気です。

 

現状、Bさんの毎月の生活費(支出)は約25万円。このままでは年間で約130万円貯金を切り崩す計算ですから、資産を81歳で使い切ってしまう見込みです。平均寿命の88歳まで生きると考えると、約1,000万円足りません。Bさんにこれからできる対策はあるのでしょうか

まずはシンプルなことから…FPの助言

対策1.支出を見直す

対策としてまず考えられことは、支出を見直すことです。ただ、「節約」と聞くと目が行きがちな食費や日用品などを削減することはストレスを感じやすく、そのわりに効果が限定的なことが多いです。

 

そこでFPがおすすめしているのは、住宅費やローン、通信費(携帯電話料金)、保険料といった金額が大きい「固定費」から見直すことです。

 

特に、持家でなかったBさんにとって住宅費は非常に大きな支出となっています。都心部に住んでおられるため、家賃は10万円超えです。そこで、「高齢者向けシェアハウス」の活用や、ご兄弟やご親族が住む地方への移住などを検討するようお伝えしました。

 

「高齢者向けシェアハウス」とは、複数人の単身世帯の高齢者が共同生活を送る住まいのことです。バリアフリー設計が施され、足腰が弱った高齢者でも生活しやすい点が特徴です。通常の賃貸より割安で住むことができるほか、共同生活を行うことで、高齢者の1人暮らしにともなう不安や孤独の解消にも有効です。

 

入居条件はシェアハウスによって異なりますが、自立して生活できる人向けの物件が中心となっています。

 

また、ご自身の出身地や兄弟親族がいる土地など、自分と繋がりがある地方都市への移住も選択肢のひとつです。一般的に大都市に比べ地方都市のほうが家賃を抑えられる傾向にありますし、なにより「知人が近くに住んでいる」という安心感を得られることが大きなメリットといえます。