長期の入院、リハビリが必要に…気になる費用は?
病院では迅速な手当てが行われました。Aさんは手術が終わって休んだ病室で、「もう働けないのでは」とまで考えていたそうです。幸いにも早期の段階で病院へ行けたこともあり、Aさんの症状は比較的軽く、体のマヒなどは発生しなかったそうですが、言葉をうまく使えなくなっていました。
「すぐには退院できないのかな」
連絡を受けた同じ市内に住む姉は、車で1時間ほどかけて病院に通い、入院中の手続きや世話をしてくれました。
「治療費はどれくらいかかるのだろう」
気持ちがふさぎがちなAさんでしたが、病院のスタッフや姉の励ましで、なんとか治療に前向きに取り組んでいました。入院中にはさまざまな費用が必要です。Aさんが活用できる制度や給付金は以下になります。
Aさんが入院した際にかかった費用
医療機関の窓口で支払う金額は、医療費総額の3割と着替え代や食事代、個室などを選んだ場合の差額ベッド代などです。高額療養費制度によって所得に応じて医療費の自己負担限度額が定められており、自己負担を超えた金額は払い戻されます。
医療費が高額になることがわかっている場合は、健康保険組合から「限度額適用証明書」を取り寄せて医療機関の会計に知らせると、支払額を自己負担限度額に抑えることができます。
Aさんの自己負担限度額は以下の計算式で算出されます。
Aさんが入院中にかかった費用は以下です。
〇脳神経外科(2週間)
医療費:18万5,000円 差額ベッド代:5万円
食事代:18,000円
パジャマなど日用品レンタル代:8,000円
合計:26万1,000円
〇リハビリテーション病院(2ヵ月)
医療費:17万8,000円×2ヵ月=35万6,000円
食事代:4万2,000円 ×2ヵ月=8万4,000円
日常着・パジャマ・日用品レンタル代:3万7,500円×2ヵ月=7万5,000円
合計:51万5,000円
→総合計:77万6,000円
受け取れるお金
■傷病手当金
業務外で受けたケガや病気の療養のために仕事に就けない場合に、連続した3日間のあと、4日目以降から支給されます。支給額は、「直近12ヵ月の標準報酬月額の平均額×1/30×2/3」に相当する額です。
支給期間中に仕事に就いた場合は、傷病手当金が支給されない期間があることが考えられます。しかし、令和4年1月1日から、同一のケガや病気に通算して1年6ヵ月、つまり支給開始日から1年6ヵ月を超えても受け取ることができるようになりました。
■Aさんが加入している生命保険会社の医療保険
入院給付金は、入院途中でもいったんそこまでの入院期間に相当する入院給付金を請求することができます。この場合は、退院後に残りの入院給付金を請求することになります。ただし、その都度必要書類の提出が必要になり、診断書も通常有料(5,000円~1万円程度)になるため、まとめて請求した方が費用では少額で済むケースもあります。
なお、傷病手当金や医療保険の給付金は、自動的に振り込まれるわけではありません。Aさんが書類などを揃えて申告する必要があります。
長期の入院が必要に…資産は十分でもお金が足りないワケ
「お金が足りない……」
Aさんは姉に窮状を訴えます。
Aさんの貯蓄は1,500万円です。給与の振り込まれる口座入っている額は25万円程度です。貯蓄の1,500万円は、株式や投資信託などの金融商品です。国内株式や投資信託は、多くの場合1週間もかからずに現金化することが可能ですが、Aさんが保有する商品には一部外国株式も含まれています。
体が不自由な身で自ら手続きすることが困難ななか、長期の入院が必要となると、医療費を含め、自宅の賃貸マンションの家賃や、光熱費などの支払いができない可能性があります。お姉さんに支払いを始め、さまざまな協力をお願いせざるを得ませんでした。