かつて賑わったニュータウンに取り残される高齢者たち
ーーもう、どこにも行けないわね
そう、寂しそうに呟いたのは、80代だという高齢女性。高度成長期には次々と住宅が建てられた、いわゆるニュータウンに住んでいます。駅からは徒歩で1時間というロケーションが若い世代に嫌われ、年々人口は流出。現在は、右を見ても左を見ても高齢者という状況だといいます。
そんな地域で唯一、最寄りの鉄道駅にいける手段だったのが路線バス。しかし人口減により、年々便数は減少。路線廃止も視野に議論されているといわれています。
ーーこの先、どう生きていけばいいのかしら
高度成長期。全国的に住宅が不足し、各地でニュータウンが造られました。しかし鉄道駅からは遠いというのがお決まりのパターンで、高度成長期を過ぎた80年代ごろをピークに人口減少。いまや住んでいるのは高齢者だけというのは、特に地方のニュータウンで顕著になっています。そして唯一の交通手段の路線バスがなくなり、移動手段が限られる高齢者が孤立化の危機にある、というところまでがお決まりのパターンです。
厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金受給額は、併給の国民年金と合わせて月14万円ほど、手取りにすると12万~13万円でしょうか。それに対し1ヵ月の平均支出額は14万円ほど。年金だけで生活するのは難しく、貯蓄を取り崩しながら生きていく、というのが、日本の高齢者の平均像です。
そんな状況下、駅に行くまでタクシーを利用……そんな贅沢がそうそうできるわけはありません。生活を支える路線バスの減便・廃止は、特に高齢者にとって大問題なのです。また路線バスに代わってコミュニティバスの導入なども検討されている地域もありますが、地方はどこも財政難。実現が難しいケースばかりだといわれています。
日本の各地に次々とできつつある、陸の孤島。そして取り残される高齢者。抜本的な解決策は、いまのところ示されていません。