入居する老人ホームが決まってほっと一息…だが安心はまだ早い
老人ホームへの入居で知っておきたいこととして、やはり「お金」のことは外せません。通常の賃貸住宅では聞きなれない言葉もあるので、疑問に思うことも多いでしょう。
老人ホームへの入所の際、まず支払うのが「入居一時金」。家賃の前払いと考えると分かりやすいでしょう。入居一時金は0円の施設から数億円のプレミアムな施設までとピンキリ。そのほか、毎月の利用料を支払う必要があります。一定の月額利用料のほか、理髪代など費用に含まれないものもあり、月によって変動します。また月額利用料に含まれるもの・含まれないものも、施設によってまちまちです。
総務省のアンケート調査によると、入居一時金は平均260万円程度、施設からの請求額は平均12万円程度、個人的支出は平均2万円程度でした。
たとえば夫を亡くした80代女性。厚生労働省によると、遺族年金受給額は平均8万円程度。自身の国民年金と合わせると、月々14万円程度の年金収入があると考えられます。手取りにすると月12万~13万円程度でしょうか。これで施設からの毎月の請求額をカバー。入居一時金と毎月の自腹の部分は預貯金でカバー。そんなマネープランが考えられます。
費用の目途もつき、入居する施設も決まり、ひと安心……とは必ずしもならないのが、老人ホーム選びの難しいところ。一般の賃貸住宅でも「住み心地が悪い」とか「隣人とのトラブル」などで、引越すことはあるでしょう。老人ホームも同じです。しかも「終の棲家」として入居したのであれば、こだわりも強いでしょう。「ちょっと我慢すればいい」ということも、「積もり積もって限界」→「退去」ということも珍しくはありません。
たとえば「毎日の食事」。食の好みは人それぞれ。しかし、
ーーここの食事は、ちょっとしょっぱいな
そんなことも、毎食となるとうんざりするでしょう。「人の話し声」もよくある退去理由。生まれてからずっと戸建てに住んでいた人であれば、初めての集合住宅での暮らし。壁を1枚隔てた先に他人がいるというのも初めてのことです。
ーー常にひそひそ話が聞こえてくる
静かにしたら聞こえてくる、他人の声。そんな状況に辟易するでしょう。また規模の大きい施設では100人単位で高齢者がいる老人ホーム。当然、うまのあわない人もいます。
ーーなんとなく、気に食わない人がいる
そんな状況も、毎日となれば大きなストレスです。
「そんな小さいこと、我慢して」と思うでしょうが、小さなことも日常となれば耐えられるものではありません。仕方なく、退去……老人ホーム選び、失敗です。