年金暮らしの老夫婦。長年連れ添った仲とはいってもまだまだお互いに知らない一面があるようで……。本記事では、Aさんの事例とともに、家族のカタチが多様化した現代で増加している問題について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
一生に一度のお願いがあるの…年金月26万円の70代老夫婦、50回目の妻の誕生日に告白された「衝撃事実」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫と一緒のお墓、夫の実家のお墓に入りたくない…妻の心理とは?

夫婦は同じお墓に入るもの、嫁に行ったら夫の実家のお墓に入るもの、という認識が日本には昔からありましたが、家族の在り方や暮らし方の考え方の多様化から、こういった認識に疑問を持つ人も増えてきました。

 

伝統的なお墓に対する考え方に疑問を持つのは女性の方が多いようです。2015年春に第一生命経済研究所は次のように発表しています。

 

60歳から79歳までの有配偶男女に対して実施した調査結果では、一般論として、夫婦は同じお墓に入るべきかをたずねたところ、54.7%が「そう思う」と回答し、「まあそう思う」(27.4%)と合わせると72.1%が入るべきだと考えていた。

しかし性別にみると、男性では62.2%が「そう思う」のに対し、女性では47.3%と半数を下回っていた。「あまりそう思わない」「そう思わない」女性は、合わせて23.1%おり、女性のうち4、5人に1人は、夫婦は同じお墓に入るべきだとは考えていなかった。

(中略)

年齢・性別でみると、60代前半の女性では、「あまりそう思わない」「そう思わない」の合計が31.3%もおり、同じお墓に入るべきだと考えない人が多く、団塊の世代あたりの女性では、「妻は夫と同じお墓に入るべき」といった価値観を持たない人が少なくない。

2015年4月第一生命経済研究所「偕老同穴、今は昔?」より引用

 

10年近くも前のデータですが、すでにこのころからお墓に対する考え方がこれだけ変わっていることに驚きですね。

 

嫁ぎ先や配偶者と一緒のお墓に入ることは昔からの慣習ではありますが、法的根拠はありません。ですから、妻が自分の実家のお墓に入ったり、新たに自分のお墓を作って入ったりしてもまったく問題はありません。

 

しかし、生前に家族と話し合い等で自分の意志をしっかりと伝えておく必要はありますし、自分で入るお墓を生前に用意しておく必要があります。

 

「女性専用のお墓」は次のようなものがあります。

 

永代供養付きの共同墓地

色々な人が一緒に埋葬されるお墓です。永代供養が付いていますので、お子さんがいない方や身寄りのない方に人気です。夫と別のお墓に入りたい女性には、お子さんに迷惑もかけませんので、友人と一緒に購入される方も多いようです。

 

おおまかに次の3タイプにわけられますが、どれを選ぶかによって金額は大きく変わってきます。購入される方は事前にしっかり調べて購入しましょう。

 

1.初めからほかの遺骨と一緒に合祀するタイプ
2.一定期間(13年など)は骨壺に入れて個別に埋葬され、その後に合祀されるタイプ
3.期間に関係なく、永久に個別で埋葬されるタイプ

 

女性専用区画の個人墓

霊園や寺院によっては、女性専用区画という場所を設けており、個別でお墓を建てることもできます。継承者は不要ですが、一定期間が過ぎるとお墓から遺骨を出して合祀されるケースが多いようです。墓石等に大きなお金がかかりますし、合祀のタイミングなどにより金額も変わってきますから説明をしっかり聞いて決めましょう。

 

納骨堂

建物の中に墓所があるもので、ロッカー式のタイプもあります。こちらも女性専用のエリアを配している所もあります。